追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?
4 バリオス、捕らえられる1《追放者SIDE》
4 バリオス、捕らえられる1《追放者SIDE》
「おかしい……あの暗殺者から連絡がない……」
バリオスは焦っていた。
先日、暗殺者ギルドを通じ、辺境の酒場で一人の暗殺者に依頼をした。
彼──あるいは彼女かもしれない──は凄腕だという話で、レインを確実に殺してくれると期待していた。
だが、その後はなんの音沙汰もない。
成功すればすぐに連絡があるだろうし、失敗したならそれも連絡が来るはずだ。
相手はプロの暗殺者なのだから、自分の失敗を隠したりはしない。
ありのままを報告する──そんなプロ意識の高い暗殺者を指定し、依頼した。
「なのに、どうなっている……なぜ、なんの連絡もよこさん……!」
こん、こん、と執務室をノックする音がして、バリオスの思考は中断された。
「誰だ!」
思わず怒鳴ってしまう。
「あら、ご機嫌ななめね」
ドアの向こうから女の声がする。
副ギルドマスターの一人、グレンダだ。
「……入れ」
言うと、グレンダが部屋に入ってきた。
「ねえ、バリオス。ちょっと話があるんだけど」
さらに、
「俺もお邪魔するぜ」
「儂もだ」
と、コーネリアスとゲイルも続く。
「なんだ、副ギルドマスターが三人そろって……」
「その、ちょっと休暇をもらおうと思ってさ」
「俺も」
「儂も」
「全員そろって休暇か?」
バリオスは眉をひそめた。
「だって、最近暇じゃない。もう所属冒険者だって、ちょっと前の三分の一くらいしかいないのよ?」
「ギルドランクの降格もほぼ確定だしな」
「ずっと働き詰めだったから、そろそろ体を休めたいのだ」
三人が口々に言った。
「むむ……」
そう言われると、返す言葉がない。
「数日だけだし、いいでしょ?」
「……まあ、いいだろう。できれば、三人で少しずつタイミングをずらして休んでほしいが……」
「なら、順番に休むわ。ありがとう」
「じゃあな」
「失礼する」
言って、三人は執務室からそそくさと出て行った。
「なんだったんだ、一体……?」
こん、こん、とふたたびドアをノックする音がした。
「なんだ、グレンダたちか? まだ話があるのか」
「『王獣の牙』ギルドマスター、バリオス殿、ですね?」
ドアが開き、数人の男たちが入ってきた。
「なんだ、お前たちは──」
「あなたに、このギルドの元所属冒険者暗殺を企てた容疑がかかっています。我々に同行願いますか?」
男たちは憲兵のようだった。
「な、なんだと……!?」
バリオスは全身から血の気が引くのを感じていた──。
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