追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?
5 副ギルドマスターたちにも見放される《追放者SIDE》
5 副ギルドマスターたちにも見放される《追放者SIDE》
「全部あいつのせいだ……絶対に許さんぞ、レイン……!」
バリオスは恨みの言葉を吐きながら歩いていた。
ここは町外れにある酒場だ。
そして、先日連絡を取った『暗殺者ギルド』との連絡場所である。
彼ら『暗殺者ギルド』は冒険者ギルドのように大々的な本部などはない。
その職業の性質上、おおっぴらに関係施設を建てることができないのだ。
したがって、彼らとの連絡はこうして目立たない場所で行われる。
「あんたが依頼人だね」
背後から声がした。
「──!?」
ゾッとなる。
まったく気配を感じさせないまま、誰かが背後に立っていた。
「そうだ。殺しを依頼したい」
「了解。ターゲットは?」
「こいつだ」
と、似顔絵を出す。
「名前はレイン・ガーランド。現在は冒険者ギルド『青の水晶』に所属しているはずだ」
「了解」
互いに名乗ることもなく淡々と取引が進んだ。
「ふう」
酒場からギルドに戻ったバリオスは息をついた。
ちなみに今日も所属冒険者が三十人ほど離脱していった。
すでに所属冒険者の数は二百を切っている。
少し前には五百人以上いたというのに、もはや半分以下だった。
一気に大人数が辞めたため、他の者も『このギルドは先行き不安だ』と感じて辞めていく。
こうして離脱の連鎖が起こっているのだ。
「そのうち百人を切るかもしれんな……」
バリオスはどこか他人事のような気分でつぶやいた。
危機感すら麻痺してしまっていた。
そんな中で怒りや憎しみだけが、どこまでも増大する。
「せめて、あいつだけは殺す……殺してやる……ふひひ」
自然と笑みがもれた。
すべてレインのせいだ。
そんな思考で凝り固まってしまっていた。
三人の副ギルドマスターが相談していた。
「──ねえ、どうする?」
中年女剣士のグレンダが声を潜め、他の二人にたずねる。
「どうするって?」
「バリオスか。どうやら『暗殺者ギルド』と接点を持っているようだの」
「あそこにかかわるのはさすがにまずいでしょ」
グレンダがため息をつく。
「暗殺ってことは──レインか」
「ふむ。一つ、我らで先回りしてレインに知らせに行くか。恩を売るのだ」
「いいかもね。あたしらも意地を張ってる場合じゃない。あいつに頭を下げてでも、今の状況をなんとかしてもらわないと──」
「噂じゃあいつ、高ランクモンスターを次々に狩ってるらしいからな……」
「実は強かった、ということかの。ともあれ、レインが暗殺される前に行くとしよう」
副ギルドマスターたちはうなずき合い、場を離れた。
すでに三人ともバリオスを見限っていた──。
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