4 A級昇格クエスト


「中級魔族討伐――」

「ああ、もちろん魔族は普通のモンスターとは次元が違う強敵だ。S級やA級でも簡単には倒せない。だから、昇格クエストは集団戦なんだ」


 と、エルシーさん。


「期日までに希望者を募り、全員で臨時パーティを組んで中級魔族と立ち向かう」

「パーティ戦……」

「実際の冒険者はパーティを組んで行動することが多いからな。個人の能力だけじゃなく、集団での連携能力なども同時に査定するようだ」

「なるほど」


 うなずき、俺はエルシーさんに言った。


「その昇格クエストを受けます」


 まあ、『燐光竜帝剣レファイド』があれば問題ないだろう。

 必ずクリアしてA級になってやる――。




 そして、一週間後。

 A級昇格クエストが行われる南部地方の台地に俺はやって来た。


 ここが今回のターゲット……中級魔族の出現予測ポイントなのだという。

 で、そこで俺は懐かしい相手に出会った。


「レイン様、お久しぶりです!」


 結い上げた金髪に赤い騎士鎧を着た美少女――。

 大陸最強ギルド『星帝の盾』のエースにしてS級冒険者、リリィ・フラムベルだ。


「リリィか。『光竜の遺跡』以来だな」

「あのときはお世話になりました」

「いや、こちらこそ」

「最近のレイン様の評判、聞いていますよ。大活躍みたいですね。あ、B級昇格おめでとうございます!」

「知ってたのか」

「もちろん! あたしはレイン様の情報は詳細に追いかけています。遠からずS級まで来ると思うので」


 微笑むリリィ。


「はは、まずはA級だ……って、リリィはどうしてここにいるんだ?」


 S級の彼女がA級昇格クエストを受ける理由はない。


「実はギルドの後輩がこのクエストを受けるので付き添いに――」

「へえ、あんたがレイン・ガーランドか。リリィ先輩から話は聞いてるぜ」


 声がして振り返ると、そこには一人の少女剣士が立っていた。

 ツインテールにした黒髪に、リリィとよく似た赤い騎士鎧。

 年齢は十五歳くらいだろうか。


「俺はマーガレット・エルスだ」


 名乗る少女。

 俺という一人称だが、まぎれもない女の子のようだった。


「あんたとはライバルであり共闘する仲間ってわけだ。よろしくな」

「ああ、よろしく」

「彼女は『星帝の盾』の有望株です。よろしくお願いしますね」


 と、リリィが俺に一礼した。


「へへ、すぐにA級……そしてリリィ先輩と同じS級になってみせるぜ」


 マーガレットは張り切っているようだ。


 他にも数名の冒険者が集まってくる。

 数は全部で六人。

 全員、このクエストで共闘する『仲間』である。


「では、あたしはこれで。ご武運を祈ります」


 言って、リリィは去っていった。

 S級である彼女はこのクエストにはかかわれないのだ。


「へへ、待っててくれよ、先輩。絶対リリィ先輩に良い報告をするからな」


 ますます張り切るマーガレット。

 そのとき、周囲の空間が鳴動を始めた。


「これは――」


 中級魔族出現の予兆、か。

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