3 上を目指して
「A級やS級になるには昇格クエストというものがあるんだ」
話しかけてきたのは、ギルドマスターのエルシーさんだ。
「昇格クエスト……ですか?」
俺は小さく首をかしげた。
実は冒険者ランクの昇格システムについては、あまりよく知らない。
俺にはランキングなんて縁がないものと諦めていたからな。
少なくとも『王獣の牙』にいたころは裏方メインで、あまりクエストをこなしていなかった。
当然、実績面ではゼロに近く、底辺のD級にとどまっていたわけだ。
A級やS級なんて、俺とは別世界の華やかな場所――。
そんなイメージだった。
その俺が今、AやSを目指しているなんて不思議な気分だった。
と、
「S級を目指すんですか、レインさん! やった、そうこなくっちゃ!」
今度は少年剣士のラスだ。
「ほう、お前がS級を目指す? いいじゃないか、若者はどんどん羽ばたいていかないとな! がはは」
さらにバーナードさんまで。
「話を戻すぞ。B級まではその冒険者の実績による自動認定でランキングが決まる。が、A級以上は別だ。実績にプラスしてギルド連盟が認定している特定のクエストをこなさなければならない。それを俗に『昇格クエスト』と呼んでいる」
エルシーさんが説明した。
「ちなみに実績については、君は現段階でA級認定を受けられるほどだ。何せあの『光竜の遺跡』を攻略しているんだからな」
「むしろS級でもおかしくないと思います」
ニーナが言った。
「あたしもそう思ったんだけど、聞いてみると『光竜の遺跡』攻略はレインに同行したリリィ・フラムベルの功績が大きかった、と判断されているようだな。主にレインの活躍で攻略した、と連盟が判断していたら、すでにS級認定の実績だったはずだ」
「えっ、でも遺跡は実際にはレインさんの力が大きかった、ってリリィさんも後で言ってましたよ?」
「連盟はそう判断しなかったんだ。仕方がないさ……我々のような弱小ギルド所属の冒険者はどうしても評価されづらいんだ」
エルシーさんがため息をつく。
「すまないな、レイン」
「いえ。実績なんてこれから積めばいいんです。俺はまだまだがんばりますから」
にっこりと笑う。
「そう言ってもらえるとホッとするよ。で、昇格クエストなんだが、これ自体も何種類かある。冒険者は自分の得意分野に合わせて、クエストの種類を選ぶんだ」
「なるほど……」
「必要なら後ですべて教えるが、とりあえず一番直近で受注できるのは――」
エルシーさんが俺を見つめる。
「中級魔族討伐だ」
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