2 冒険者ランク


「実績作り?」

「ああ、俺がもっとこのギルドのために活躍する」


 俺はニーナに言った。


 以前、ウラリス王国の人間が来て、俺を勇者という広告塔に仕立て上げようとしていた。

 たいしたゆかりもない国のために、そんなものになるつもりはない。

 けど、世話になっているこのギルドのためなら話は別だ。


「今の冒険者ランクはD級だけど、実績を積み重ねていけば、もっと上に行けると思うんだ。今の段階でも次の更新でたぶんCか……もしかしたらBくらいまでは昇級できるかもしれない」


 冒険者ランクというのは、全ギルド共通で通用する指標だ。

 そのランキングはギルド連盟という場所が管理している。


 各地に数百もある冒険者ギルドのすべてをまとめる統括組織である。

 連盟は各冒険者ギルドから所属冒険者の実績報告を受け、それをもとにランキングを作成している。


「次のランキング更新発表はちょうど明日ですね」


 と、ニーナ。


 基本的に更新は一か月に一度だ。

 俺がここに入って三週間ほど。

『青の水晶』所属冒険者として初めて迎える、ランキング更新日ということになる。


「ランキングが上がっているといいですね。私も応援してますっ」

「ありがとう、ニーナ」

「あ、それと……さっきおばちゃんが言ったことは、その」

「ん?」

「だから、えっと、私がレインさんのことを食堂で話している、っていう」

「ああ」

「き、気を悪くしましたか? もちろん、悪口とかじゃなくて、レインさんは本当にすごい、っていうことを話しているので――」

「そんなこと疑ったりしないよ。ニーナはそんな人じゃないだろ」

「レインさん……」


 ニーナがはにかんだ笑みを浮かべる。


「おやおや、いい雰囲気だねぇ」

「お、おばちゃん、そういうこと言っちゃだめぇ……」


 また顔を赤くするニーナ。

 かわいらしい子だなぁ、とほっこりしてしまった。




 そして翌日。


「おめでとうございます、レインさん!」


 ギルドに行くと、窓口からニーナが駆け寄ってきた。


「さっき更新されたランキングが発表されました。レインさんはD級からB級への二ランクアップだそうです!」

「B級か……!」


 S級が英雄、A級が超一流、そしてB級は一流――。

 一般的にはそう言われている。


 俺も一流冒険者の仲間入り、ということになる。


 このギルドだとB級は他にバーナードさんだけである。

 あとはラスがB級も間近といわれていて、十代でこれはかなりすごい。


「あっという間にB級ですね」

「ああ。だけど終わりじゃない」

「えっ」

「俺はさらに上を目指すよ」


 A級、そしてS級に――。

 かつて『王獣の牙』にいたころには考えられなかった目標。


 だけど、こうしてB級まで上がったことで具体的なイメージができてきた。


「けど、A級やS級ってどれくらいの実績を積めばなれるんだ?」

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