第4章 最強への道を駆け上がる
1 食堂にて
昼過ぎになり、俺はギルドの建物内にある食堂にいた。
ちょっと遅めの昼ご飯である。
注文したメニューが来るのを待っていると、
「あの、隣よろしいですか?」
「どうぞ……って、ニーナか」
「えへへ、ちょうど私も休憩時間なので」
微笑みながら、俺の隣に座るニーナ。
ほどなくして、ウェイトレスさんが俺たちの元に料理を運んできた。
俺は定食Bセットで、ニーナはスパゲティだ。
「相変わらず美味しいな、ここの定食。値段も良心的だし」
「ここの料理は冒険者たちが仕留めた獲物をふんだんに使ってるんですよ。だから新鮮です」
俺たちはにこやかに食事を進めていた。
美味しい食事は心を癒してくれる。
「へえ」
「ギルドランクはまだまだ低いですけど、食堂のランクならS級にだって負けない、って食堂のおばちゃんがよく言ってます」
「確かにS級だ。美味しいよ」
「へえ、嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
カウンターの向こうから太った女性が笑顔を見せた。
「あの人は──」
「さっき言った『食堂のおばちゃん』です。ここの料理を仕切ってるんですよ」
「どうも。いつもごちそうさまです」
「ああ、あんたが最近ギルドに入ったっていうレインさんかい? 凄腕なんだってねえ」
「いや、そんな……」
「そこにいるニーナちゃんも嬉しそうにあんたのことを話してるよ。素敵な人だ、とかなんとか」
「えっ、やだ、おばちゃん……っ」
ニーナが顔を赤くした。
「そ、その話は本人の前で言わないでぇ……」
と、顔を両手で覆ってしまう。
「え、えっと……」
俺の方もどういう反応していいか分からないな。
ニーナって、俺のことをそんな風に話してくれてたのか。
「ははは、初心だねぇ」
豪快に笑うおばちゃん。
ふとカウンター越しの厨房に目を向ける。
美味しそうな匂いが漂ってくる。
ただ、窯の辺りに修理中と書いてあったり、全体的に少しボロい感じがするぞ……?
「ああ、ちょっと色々傷んでるんだよ、うちの厨房。随分前から使っている器具もあるからね」
と、おばちゃん。
「まあ、全体的にだいぶガタが来た厨房だけどね。そこは料理人の腕で補うさ」
ニヤリと豪快に笑う。
実際、料理はすごく美味しいもんな。
「すみません。修繕費が捻出できないか、もう一度エルシーさんに掛け合ってみます」
ニーナが頭を下げた。
「いいよいいよ、ニーナちゃんに文句言ってるわけじゃないからさ。もちろん、ギルドマスターにもね」
おばちゃんが笑う。
「ここの財政が苦しいのはみんな知ってる。その中で最善を尽くそうと頑張ってるのさ」
「財政が苦しい……か」
俺にできることはあるだろうか。
やっぱり──実績作りかな。
ふとそう思った。
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