5 受付嬢ニーナ


「今日のクエストを達成してきたよ。確認を頼む」

「お帰りなさい、レインさん。今日も早いですね」

「近場だったし、すぐモンスターを発見できたからな」

「さすがは我がギルドのエースです」


「エースって呼ばれ方は、なんか面はゆいっていうか、どうも慣れないんだよな……」


 俺は照れ笑いを浮かべた。


「レインさんらしいですね」


 ニーナもくすりと笑う。


「ふふ、今日も仲がいいのね。うらやましい」


 隣の窓口から受付嬢のメアリが笑った。


 ニーナと同い年の十七歳。

 赤いショートヘアにそばかすの浮いた愛嬌のある顔立ちの娘だった。


「たまにはあたしのブースにも来てよ、レインさん」


 と、誘うメアリ。


「なんとなく、いつもニーナのところに来ちゃうんだよな。やっぱり慣れてるし……」

「まあ、ニーナは優秀だしねー。レインさんがギルドのエースなら、ニーナは窓口のエースだもん」

「そんなことないよ、メアリちゃん」

「この前だってあたしがギルド規則への質問で困ってたら、隣から教えてくれたじゃない。あの鮮やかな解決っぷりは見ほれちゃった」

「て、照れるなー、もう」


 と、顔を赤くするニーナは可愛かった。


「いつも助けてもらってるからねー。感謝感謝」

「えへへ」


 他愛のないやり取りも微笑ましい。


「いつもニーナにお世話になってるんだし、食事にでも誘ってあげたら、レインさん?」

「食事?」


 突然の提案に少し戸惑ってしまう。


「ニーナも喜ぶと思うな」

「ち、ちょっと、メアリちゃん……」

「そうだな。確かにいつも世話になってるし」


 幸い、というか手持ちの金は、最初の想定よりもずっと多い。

 ニーナにおごるくらい、なんてことはない。


「ふふふ、ニーナへの援護射撃成功ね」

「援護射撃?」

「あ、ひょっとして、レインさんって鈍いタイプ?」


 と、メアリ。


「なんの話をしてるんだ?」

「うん、間違いなく鈍いタイプだね」

「もう、メアリちゃんったら」


 一方のニーナはますます顔を赤くしている。


「……でも、ありがと」


 ぽつりとつぶやいた。


「???」


 さっきからのやり取りが、今一つ飲み込めない……。

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