9 上級ドラゴン


『術者の戦闘経験が一定値に達しました』

『術者の付与魔術がレベル2にアップしました』

『付与魔術に新たな領域が追加されます』


 ベフィモスを撃破すると、そんなアナウンスが流れた。

「付与魔術の新たな領域……?」


 なんだ、それは。

 聞いたこともないぞ……。


「どうかしましたか、レイン様」

「うーん……どうも俺の付与魔術が少し成長したみたいなんだ」


 たずねるリリィに答える俺。


「えっ、レイン様の付与魔術がさらに強くなった、ということですか!? すごいです──」


 彼女は目を輝かせて俺を見つめた。


「『付与魔術に新たな領域が追加された』って声が聞こえたんだけど、具体的にどういうことなのかが分からないんだよな。詳細に教えてくれるか?」


 最後の言葉はいつものアナウンスの『声』に対する質問だ。


『術者の質問を確認』

『付与魔術の新たな領域とは──』


「何者だ! この神聖な領域に立ち寄り、あまつさえ地皇獣ベフィモスまで殺した奴は!」


『声』の答えをさえぎるように、そんな怒声が響き渡った。


「こいつは──」


 まさか。


「剣を守る上級ドラゴン……!?」


 リリィがつぶやく。

 次の瞬間、壁を突き崩しながら、巨大なシルエットが出現した。


 二本の首と二対の翼を持つ、竜。


「やっぱり上級ドラゴンか!」


 俺たちの戦いを感知してここまでやって来たのか。


 ドラゴンの二つの顔はいずれも俺たちをにらみつけている。

 戦う気満々だ。


「まあ、ちょうどいい。お前を倒せば、剣を安全に手に入れられるだろうからな」

「レイン様、まずあたしが仕掛けます!」


 言うなり、リリィが突進した。


「スキル『斬竜閃』!」


 繰り出された剣が上級ドラゴンの胴部を切り裂く。


「くっ、浅い──」

「その程度の踏み込みでは、我が鱗は貫き通せん!」


 ドラゴンが反撃を繰り出す。


 長大な尾の一撃を避けきれずに、リリィは俺の足元まで吹っ飛ばされた。


「リリィ、大丈夫か!?」

「は、はい、なんとか……ですが、もはや動けません……」


 リリィがうめいた。


「たった一撃でこの様とは……恥ずかしいところをお見せして、申し訳ありません……」

「気にするな」


 今にも泣きそうな顔をするリリィに、俺はにっこりと言ってみせた。


『付与魔術、第二術式の起動が可能です。起動しますか?』


 アナウンスが流れた。


「第二術式?」


 俺の付与魔術の内容はこうだ。


 武器や防具に強化ポイントを込め、その威力や効果を高めることと、自分で撃破したモンスターから『強化ポイント』を奪取すること。

 これらをひっくるめたものが、『付与魔術の術式』である。

 じゃあ、第二の術式って一体──?


「あ、さっきの『付与魔術の新たな領域』ってやつか?」

『その通りです。第二術式とは──』


 アナウンスが、その内容を説明した。

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