7 VS地皇獣


「今度はお前か。そんな安物の剣で、我が装甲を貫くつもりか──ん?」


 言ったところで、ベフィモスが目を細めた。


「な、なんだ、その剣……異常なほど強化されている……あ、ありえん……」


 俺が今回持ってきたのは、鋼の剣2本だ。


 壊れてしまった銅の剣に込められていた『+9700』の強化ポイントは、一本に『+1000』、もう一本に『+8700』を付与してあった。


 今、俺が構えているのは『+1000』の剣である。

 もう一本は上級ドラゴンと戦うためのとっておきだ。


 ちなみに道中のモンスターはリリィが倒しているので、俺は強化ポイントを得られなかった。

 あくまでも、自分で倒したモンスターの残存魔力からしかポイントを得られないのだ。


「なるほど。その武器は確かに強力だ。認めよう」


 うなるベフィモス。


「だが──俺のスキル『迅雷突進じんらいとっしん』に反応できるのか? さっきの女ですら反応しきれずに吹き飛ばされた。お前は明らかにその女より白兵能力で劣っているだろう」

「ああ、俺と彼女は比べ物にもならない」


 俺は苦笑交じりに答えた。


「俺の運動能力でお前の突進に反応できるのか? と聞かれたら──まあ、間違いなく無理だろうな」

「ふん、すでに諦めの境地というわけか。潔いことだ」


 言って、ベフィモスは四肢を曲げて低い姿勢を取った。

 突進するための構えだ。


「だ、駄目です、レイン様……いくらあなたでも、あの攻撃は防げない……」


 リリィが弱々しい声で言った。


「人間が反応できる限界をはるかに超えています……あたしは空気のわずかな震えから、奴の動きを予想して、かろうじて致命傷を避けましたが……」

「大丈夫。リリィはそこで見ていてくれ」


 俺は剣を構えたまま言った。


「あくまで退かんか。ならば──砕け散れ!」


 告げてベフィモスが突進する。


 ──その、直前。


「確かにスキルが発動したら、反応できずに直撃を食らうだろうな」


 俺は無造作に剣を振るった。


「だけど──対応できないとは言ってない」


 ごうっ!

 放たれる衝撃波。


 奴の動きは直進だ。

 だから正面方向を中心にした範囲攻撃を放てば──。


「その軌道上に、お前はいる。必ず」

「ぐっ、があああっ……!?」


 狙い通り──。

 範囲攻撃によって、ベフィモスはあっさり吹き飛ばされた。


「き、貴様ぁ……!」


 がくり、と力尽きるベフィモス。

 力押しもいいところだけど、ともあれ撃破したぞ。


「す、すごい……やっぱり、レイン様はすごいです……」


 リリィが俺の元に歩み寄った。


「大丈夫なのか? もうちょっと休んでいた方が──」

「あたしは平気です。初めて……強敵とレイン様の戦いを見て、感動しました!」


 リリィは目をキラキラさせて俺を見つめていた。

 うっ、ちょっと照れるというか、なんというか……。、


「と、とりあえず、これで大量の強化ポイントが手に入ったぞ」


 照れをごまかすように俺は話題を変えた。

 と、




『術者の戦闘経験が一定値に達しました』

『術者の付与魔術がレベル2にアップしました』

『付与魔術に新たな領域が追加されます』




 アナウンスが流れる。


「付与魔術の……新たな領域?」


 一体、なんの話だ──?

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