6 光竜の遺跡
俺たちは遺跡の内部を進んだ。
道のりはそれほど複雑ではなく、迷うこともほとんどなかった。
問題はやはりあちこちに生息する守護モンスターだ。
数十メートル進むごとに小さなホールがあり、そこにモンスターが待ち構えている。
撃破しないと先へは進めない。
しばらく進むと、その守護モンスターが出てきた。
甲冑をまとった巨大な鬼の騎士。
B級モンスター、オーガナイトである。
「ここはあたしが」
リリィが前に出る。
遺跡に入ってから、ほとんどのモンスターを彼女一人で倒していた。
俺が戦おうとすると、彼女が止めるのだ。
「上級ドラゴンがいる場所まで、基本的にあたし一人で戦います」
「やっぱり、それじゃ君の負担が大きいだろう」
「平気です」
言うなり、飛び出すリリィ。
さすがに、速い。
残像ができるほどのスピードで突進し、剣を一閃。
俺の強化+300の力もあってか、モンスターの首を一撃で両断する。
「ふうっ、さすがの切れ味ですね。レイン様」
振り返ったリリィがにっこりと笑った。
「さすがなのは君だよ。最難度ダンジョンの守護モンスターを次々に瞬殺してるし」
「途中に出てくるモンスターは大したことないんです。問題はやはり剣を守る上級ドラゴンと──」
ずしん、と地響きがした。
「中ボス登場、ってとこか」
「ですね。遺跡のどこかに三体配置されているという超強力モンスター……その一体が近づいているようです」
気配だけで分かる。
こいつは、今までのモンスターとは別物だって。
「広い場所に出ましょう」
リリィが言った。
「狭い場所は、炎や雷を吐いてくるような敵の場合に一方的にやられる危険性がありますから」
「分かった」
俺たちは通路を移動し、やがてホールのような場所に出た。
本来なら守護モンスターがいる場所だ。
だが、その守護モンスターは踏みつぶされていた。
「待っていたぞ」
どうやら、先回りされていたらしい。
先ほどの──強大な気配の持ち主に。
「
リリィがうめいた。
A級モンスター、ベフィモス。
全長五メートルほどで、獣型のモンスターとしてはそれほど大きくない。
が、大地を操る特殊能力を備えた強力な個体である。
さらに人間を上回る知性を持ち、魔法を操る個体もあるんだとか。
「ほう……『
ベフィモスがうなった。
その目は、リリィが構える剣に向けられている。
「えっ?」
自分の剣を見つめるリリィ。
「これって、そんな名前があるの?」
「なんだ、由来も知らずに使っているのか。では、試練を潜り抜けたわけではないのだな」
ベフィモスがうなる。
「まあ、いい。この遺跡を進んでよいのは強者のみ。我が一撃に耐えられるなら進むがいい。さもなくば──消えよ」
ベフィモスの姿がかすんだ。
いや、ほとんど視認できないほどのスピードで突進してきたのだ。
「きゃあっ!?」
さすがにリリィも反応しきれず跳ね飛ばされる。
「大丈夫か、リリィ」
俺は慌てて駆け寄り、彼女を抱き起した。
「レイン様……」
俺に抱き着いたまま、うめくリリィ。
「申し訳ありません。不覚を取りました……」
「ここまで、よくがんばってくれたな。ありがとう」
礼を言って、彼女を横たえる。
「選手交代だ。ここからは俺がやる」
そして剣を構えた。
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