5 竜王国ガドレーザ


 数日の旅を経て、俺たちは竜王国ガドレーザにたどり着いた。


 その足で冒険者ギルド『覇王竜の翼』を訪ねる。

 ここは俺が以前に所属していた『王獣の牙』やリリィの所属する『星帝の盾』と同じく、五つの大陸最強ギルド『ビッグ5』の一つである。


「私たちは『光竜の遺跡』に挑もうと考えています。恐れながら貴ギルドにそのご許可をいただきたく」


 俺は一礼して言った。

『光竜の遺跡』の探索は、この『覇王竜の翼』の管轄クエストなのだ。


「あの『光竜の遺跡』に挑むというのですか……?」


『覇王竜の翼』のギルドマスターが俺とリリィを見てうなった。

 四十絡みの眼鏡をかけた知的そうな男だ。


「いくら『炎の聖騎士』リリィ・フラムベルといえども『光竜の遺跡』の攻略は非常に難しいと思いますよ、ええ。それに──そちらの君も」


 と、俺を見据える。

 眼鏡の奥の瞳は、さすがに最強ギルドのマスターらしく鋭い。


「レインさん、でしたか…? 失礼ですが、君の名前を聞いたことがありません。私は高ランク冒険者の名前はすべて記憶しているのですが……君は何級ですか?」

「D級です」


 俺は素直にそう言った。


 そう、最強ギルドに所属していたと言っても、俺自身の冒険者ランクはDなのだ。

 基本的に裏方仕事ばかりで、ロクに実績を積めていないのが大きな理由だった。


「D級があの遺跡に入れば確実に死にますよ、ええ。およしなさい」


 ギルドマスターが顔をしかめた。


「お言葉ですが、マスター。レイン様はただのD級ではありません。その力はS級にも匹敵する──あるいは凌ぐかもしれません」

「彼が?」


 ギルドマスターはますます顔をしかめる。


「……君がそこまで言うなら、埋もれた逸材なのかもしれませんね」


 つぶやくマスター。


「まあ、遺跡の探索については承知いたしました。高名なリリィ殿の申し出とあらば、最大限に尊重しましょう」

「ありがとうございます!」


 俺とリリィは同時に礼を言った。


 さあ、いよいよ最難度ダンジョンに挑戦だ──。




 二時間後、俺たちは『光竜の遺跡』にいた。


 見た目は普通の神殿だ。

 ただ、ここの地下に広大な階層があり、難攻不落とされている。


「確か五百年以上、誰も最下層まで到達してないんだったよな」

「最後に到達したのは古の勇者エルヴァイン様。彼が『燐光竜帝剣レファイド』を遺跡の最深部に安置したそうです」


 と、リリィ。


「その後、上級ドラゴンが住みつき、剣を守るようになったんだとか──」

「道中にも強力モンスターが目白押し、だったよな」

「あたしとレイン様がそろえば大丈夫です。きっと攻略できます」

「じゃあ、行くか」


 最難度ダンジョンに挑むっていうのに、俺は不思議なほど落ち着いていた。


 リリィとうなずき合い、俺たちは一歩を踏み出した──。

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