2 いつのまにか付与魔術がチート級に成長していた


「これで、付与していた『強化ポイント』は全部俺の元に戻ってきたわけだ」


 俺は小さくため息をついた。


 この強化ポイントというのは、俺が魔力を錬成して生み出す力である。

 俺の魔力量が多ければ多いほど、『強化ポイント』として注ぎこめる量も増える。


 といっても、俺自身の魔力量は人並み程度。


 だから、毎日武器に『強化ポイント』を込めては、自然回復を待ってまた継ぎ足したり、モンスターなどを倒して得られる魔力を『強化ポイント』に変換して、武器や防具に込めたり……とにかく地道な作業を繰り返してきた。

 それを七年。


「俺の手持ち『強化ポイント』を表示」


 呪言をつぶやいた。


 ヴ……ン。


 空中に大きな数字が描かれる。


『13033』


 そう描かれていた。


「一万を超えてたのか……随分とがんばったもんだ」


 我ながら感心する。


 ただ『強化ポイント』はこのまま宙ぶらりんにしておくことはできない。

 放っておくと周囲に魔力エネルギーを発散して量が減っていく。


 つまりは『強化ポイント』は物体に込めておかないと、時間とともに目減りするのだ。


「とりあえず──手持ちの剣と服に込めておくか。いずれ必要なときに移し替えればいいし」


 俺は腰の剣を抜いた。


 安物の銅剣だけど、とりあえず強化ポイントの『一時保管先』として使うだけだから、まあいいだろう。


 ただし強化ポイントは一つの物体につき、最高で+100までしか付けられない。

 残りの大量のポイントは別の物体に付けなければならない。


「100ずつ付けていったとして、必要な武器防具とかのアイテムは……131個か。うーん……」


 そんなに大量のアイテムは持っていない。

「まず手持ちの剣に付けるか。他に服とかにも付けていって、余ったポイントをどうするかは後で考えよう」


『強化ポイント』のうち『100』を剣に付与──。


 念じたところで、数値の設定を間違えてしまった。

 桁を、二つほど。


「あっ……」


 結果、剣に付与される『強化ポイント』が『100』じゃなく『10000』になってしまう!




『銅の剣+10000』




 そう表示された。


「──って、強化ポイントは『100』を超えても付与できるのか!? 前に試したときはできなかったぞ……?」


 ……いや、待てよ。


 前に試したのは、もう何年も前だ。

 それ以来、無理なんだと決めつけて同じことを試していない。


「俺の付与術師としての能力がレベルアップしていた……とか? だから『10000』の『強化ポイント』を一気に付与できたのか?」


 他のものでも試してみよう。


 残りの『強化ポイント』を俺の服に付与──。




『布の服+3033』




「本当にできた!? とんでもない武器と防具になっちゃったな、これ……」


 たぶん剣の方は伝説級の武器と同等か、それ以上かもしれない。

 服の方も並の鎧をはるかに上回る防御力である。


「これなら無敵だな……俺一人で冒険者をやっても稼ぎ放題だ」


 適当にソロ活動するだけで、食っていけるなだろう。


「よし生活費の心配は必要なさそうだな。後は──どうしよう?」


 今までは、ほとんど休暇もなしで仕事に打ちこんできた。


 その仕事がいきなりなくなると──ちょっと途方に暮れてしまう。


「ずっと働いてきたんだ。少し長めの休暇気分で自由に過ごしてみるか」


 そう考えたとたん、気持ちが一気に楽になった。


「まずは近くの冒険者ギルドで冒険者登録して、小金を稼いでおこう。その後は当面、自由に暮らすぞ!」


 俺は意気揚々と町に向かって歩き出した。

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