追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?

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第1章 チート付与魔術師のセカンドライフ

1 追放された付与術師


「レイン、お前にもう用はない。クビだ」


 その日、俺──レイン・ガーランドは所属する冒険者ギルドから一方的に告げられた。


「クビ? どういうことだ?」


 俺は付与魔術師エンチャンターをしている。


 付与魔術とは、武器や防具などに『強化ポイント』と呼ばれる特殊な魔力を籠めることで、より高い性能を発揮させる術である。


 このギルド『王獣の牙』に所属する冒険者たちの武器や防具は、ほとんどに俺の付与がかかっていた。


 平凡な剣でも、たとえば『切れ味+10』なんてのを付与すれば、とたんに名剣に生まれ変わる。

 平凡な盾に『魔力防御+15』なんてのを付与し、魔法をも防ぐ盾に仕立てることも可能だ。


 おかげで、『王獣の牙』の冒険者たちは軒並み強力な武器防具を有し、めざましい戦績を上げてきた。


 このギルドが大陸でもっとも強大な五つのギルド──『ビッグ5』の一つとして数えられている理由の一つは、武器や防具が充実しているからだと、俺は自負していた。

 実際、ギルド員たちもこぞって俺の付与を称賛し、感謝もしてくれていた。


 なのに、突然なぜ──?


「もう十分に強力な武器や防具がそろったからだよ」


 ギルドマスターが笑っている。


「お前の武器なんてなくても、俺たちはやっていけるんだ!」

「だから、あんたは用済みってわけ。理解できたぁ?」

「しかも、お前自身は付与以外に何のとりえもない。付与魔術以外の魔法は全然使えないし、剣もからっきしだからな!」


 三人の副マスターたちも同じく笑っていた。




「ほら、とっとと出て行けよ! この役立たずが!」

「うわっ……!」


 俺はギルドの建物から追い出された。

 十三歳のときから七年も頑張ってきたのに、解雇されるのは一瞬だ。


 なんだか──空しくなる。


 見ると、ギルド所属の冒険者たちが建物の中から俺を見ている。

 数は百人以上はいるだろうか。


「みんな──」


 言いかけて、ハッとなる。

 全員がニヤニヤ笑っていた。


「あいつ、追い出されるんだって?」

「まあ、武器も防具も全部付与済みだし問題ないんじゃね?」

「用済み用済み。ははははっ」

「おいおい、みんな冷たいなぁ。ま、あいつは無報酬で武器と防具を強くしてくれる便利アイテムみたいなもんだからな。今となっちゃ、いなくなっても問題ねーか」

「お前のセリフが一番冷たいじゃねーか」


 全員が、嘲笑していた。


「……俺はこんなふうに思われていたのか」


 今まで数えきれないくらいの付与を行ってきた。

 感謝の言葉をたくさんもらった。


 俺が強化した武器防具で彼らが活躍するのを見るのが楽しかった。

 仲間だからだ。


 だけど──あいつらは俺のことを便利な道具程度にしか思っていなかったんだ。


 悔しい。

 悔しい……!


 悔しさを噛み締め、俺は町に向かって歩いた。

 歩きながら、徐々に気持ちが整理されてくる。


 仲間たちへの思いが薄れていく。

 残ったのは虚無感だけ。


「そうだ……この気持ちを清算するために、やることがある」


 俺はため息をついて立ち止まった。

 振り返ると、ギルドの建物が見えた。


「……お前たちに言ってなかったことが一つあるんだ」


 彼らにその声は届かない、と分かりつつ呼びかける。


「俺が武器や防具に付与した『強化ポイント』は、俺の意思一つでいつでも解除できるってことを」


 一人でも味方になってくれる者がいれば。

 一人でも引き留めてくれる者がいれば。


 俺も思いとどまったかもしれない。


 だけど、場にいる全員が俺を道具扱いしていた。

 なら、俺もそれなりの対応を取らせてもらう。


「『王獣の牙』所属冒険者512人の武器と防具に付与したすべての『強化ポイント』を解除──」


 術を解くのに必要なのは、俺の意思と呪言一つ。


 それだけで付与魔術の解除完了だ。

 あっけないものだった。


「これで武器も防具も強化状態からリセットされるけど……まあ、今後は自分たちの実力だけで戦ってくれ」






****

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