ピラミッド・ゴーレムの起動
それは、突然起こった。夜も更けたエジプトのカイロを激しい揺れが襲ったのである。そして、ゴゴゴゴゴ……と、耳を聾する轟音が響き渡り、瓦礫が町のそこらに落ち、あちこちに土煙がたった。咳き込み、柱につかまりながら、人々は遠くの砂漠の方を見てみると、砂塵が巻き上がり、その向こうにぼんやりと、巨大な人型の黒い影がゆっくりと立ち上がるのが見えたのだった。その異様な様子に人々は恐怖した。
地響きが止み、夜が明けると、砂漠に立った巨人が朝日に照らされていた。正体不明の巨人の出現のニュースは、瞬く間に世界に広まった。その巨人の正体は、ピラミッド・ゴーレムである。三つのピラミッドがそれぞれ変形し、合体してピラミッド・ゴーレムになったのである。
どうやら、地球が危なくなると目覚める地球の守護神らしい。これについては、ピラミッド・ゴーレムが喋ったわけでも、誰かが言い出したわけでもない。人々の中の共通理解として、テレパシーのように感じ取っていたのだった。そうではあるのだが、人々は今の地球がそれほど危機的な状況であるようには思えないのであった。
しかし、ピラミッド・ゴーレムは立ち上がったきり動かなかった。それから、24時間が過ぎ、3日が過ぎ、一週間が過ぎ、2ヶ月過ぎ、3年が過ぎたが、ピラミッド・ゴーレムは全く動く気配がなかった。
はじめのうち、変形し合体したまま動かなくなってしまったピラミッド・ゴーレムの様子を全世界の人々は固唾を飲んで見守っていた。しかし、それから一週間も経つうちに人々は飽き始めた。そして、2年も経つ頃には、あれだけ恐ろしく感じたピラミッド・ゴーレムも、今ではカイロの景観の一部となっていた。
と、ある日、何の前触れもなくピラミッド・ゴーレムは、突然ゆっくりと動き出し、両腕を胸の前でクロスさせると発光し、次第に眩しくなっていった。そして、一瞬だけ暗くなったかと思うと、緑色の閃光と共に超衝撃波が放たれた。
それによって、地球上のすべての人工物は消滅し、すへての生物は一瞬にして死滅した。続けて、赤色の閃光と共に超衝撃波が放たれた。二つの衝撃波を放ったピラミッド・ゴーレムは、静かに元のように三つのピラミッドに戻ったのだった。
すべての生命体がいなくなった地球の海に、一つの新たな単細胞生物が生まれた。ピラミッド・ゴーレムは新たな始まりを作ったのだった。
しかし、困ったのは宇宙ステーションにいた宇宙飛行士だった。ピラミッド・ゴーレムの情報は地上から逐一聞いていた。当時は緊急で地球に帰還する計画も立てられたのだが、しかし、特に害は確認されなかったため、そのうちピラミッド・ゴーレムのことは全く問題視しなくなっていたのだった。
そんな折、突如、宇宙飛行士らは緑色の光と赤色の光に覆われる地球を見たのである。そして、そこから一切地球と連絡がつかなくなってしまった。まったく、地球の守護神も迷惑なものである。しかし、宇宙飛行士らは地球の守護神に見放されたのか、それとも、彼らはもはや地球の生命ではないのかもしれない。
もはや我々人類は地球の生命ではないのだろうか。
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