第3話 春日井の道楽

 春日井板金工場で見つかった川崎直哉の家族には、すぐに連絡された。娘はすでに学校に出かけた後だったので、母親に繋がった。

「K警察署の浅川というものですが、川崎治子さんでしょうか?」

 と、いきなり警察と言われて、治子は気が動転した。

 そういえば、昨日から夫の直哉が帰ってきていなかったが、夫が帰ってこないことはあっても、普通なら連絡をくれるはずだった。しかも、K警察署ということは、旦那の会社ともこの家とも管轄が違っている。確か春日井板金工場があるのは分かっていたが、最近は兄弟仲が冷めているように見えたので、弟のところに行っているというのも少し変な気がした。治子は頭の中が混乱していた。

 治子も弟のことも嫌いだった。むしろ、弟のことを一番毛嫌いしているのは、娘の遥香で、その次が治子だった。直哉は自分の弟ということで、少しは気にしていたようだが、妻と娘が嫌っている手前、顔を見せることもしなかった。ある意味、板挟みになっているのは気の毒なことであった。

 弟の春日井悟は、兄と違って軽いところがあった。何事も楽天的に、いいことばかりを考えているといえば聞こえはいいが、彼も立ち回るのが上手いところもあり、結構女性関係は激しいというウワサにはなっているが、なぜかあまり悪くは言われていない。

 参謀である片桐の手腕もあるのだろうが、最近では、少しは大人しくなったとはいえ、女遊びに関しては、閉口するほどであった。

 兄の直哉とは対照的と言ってもいいくらい、見た目は爽やかな感じで、第一印象から最初の人当りの良さに、女性はコロッと騙されるようで、特に大学時代のご乱行は、結構なものだったということだ。

 春日井という男は、女に見境がないというところもあり、不倫や浮気に感じても、

「一体、何が悪いんだ?」

 というくらいだったので、自分が付き合っている彼女が浮気をしても、自分の手前もあるからなのか、強くは言わなかった。

 とは言っても、精神的にストレスがたまらないわけではない。その反動が、楽天的な性格として現れてくるのだった。

 だから、大学時代には結構羽目を外していて、スワッピングや乱交パーティなども自分主催で催すことが多かった。

 もちろん、性交の場ではクスリが用いられるのは、暗黙の了解で、一時期はクスリ付けになりかけていた。

 だが、一度警察に捕まって、薬物取締法違反で加療が必要とされ、何とかその時は更生したのだが、一度染まってしまうと完全に抜けることはできないのか、退院、出所後もほとぼりが冷めた頃から、また始めたのだ。

 川崎一家も、そんな弟に愛想を尽かしていた。春日井の父親が残してくれた工場を、このままでは弟が潰してしまうことになるのは、すでに見えているだけに、弟に分からないように、他の大手から工場の買収をしてもらえるように話を持ちかけたりしていた。

 銀行にいるとそういうことは結構できるもので、裏でいろいろ画策はしてみたが、なかなかうまくはいかない。そもそもそういう調略的なことに掛けては、真面目過ぎる直哉には無理だったのだろう。

 裏で手をまわして参謀である片桐を味方につけようとして、近づいた時、彼も工場の未来について、今の工場長では先が見えていることを危惧していた。しかし、だからと言って他に誰が工場長となって工場を支えていけるかということになると、その人選が難しかった。

「片桐さんなどがいいんじゃないですか?」

 と直哉は言ったが、

「いやいや、私はあくまでも影で動くフィクサー的存在なんですよ。潰すことにかけては自信があっても、新しい基盤を築いて、その長となることに関しては、まったく想像もつかないほとに無理だと思っています」

 と、片桐は言った。

 そういう意味では片桐も、近い将来、工場長に何かあるのではないかと思っていたが、その予想はある程度間違っていなかったようだ。あれは、今から十年ほど前のことで、自分たちがそろそろ仕事の中心になる年齢に達してきた頃のことだった。

「でも、そんなことを言っていては先に進めませんよ。私としては片桐さんに腹をくくってもらいたいと思っているんですがね」

 と言ってはみたが、やはり難しいようで、頑なに拒否する片桐は、彼なりに何かを考えていたのかも知れない。

 ただ、今のところできることといえば、片桐にとっては、社長が失敗しないように、自分が支えていくことだと思っていたのだが、それはあくまでも、

「工場ありき」

 の発想であって、春日井悟本人への気配りだったわけではない。

 直哉としては、

「弟のことは任せた」

 というくらいに思っていたことで、ここに二人の間に決定的な隔たりがあったのだ。

 この隔たりはやがて溝になっていく。お互いに自分の思惑を中心に話をしているのだから、話が通じるわけもない。それを二人とも相手に対して。

――どうして、この人は分かってくれないんだ――

 とばかりに考えていた。

 それは相手が考えてくれないのではなく、自分の勝手な思い込みだったということにお互いに気づかないことで、せっかく歩み寄っているのだから、どこかでぶつかればいいものをぶつからないので、あとは離れていくばかりである。近づいたことが却ってお互いに何も気づかないという悲惨なことになってしまうのであれば、最初から信用などしなければいいのだ。相手に対して敬意を表するという状況が、二人に悲劇を思わせるのかも知れない。

 お互いの利権と思惑が交差する中、春日井は増長していく。

 彼が会社に大きな損害を与えることになるくらいであれば、少々の夜の街でのおいたくらいなら、大目に見てもいいというくらいなので、キャバクラや風俗で使うお金は、大目に見るという考えになっていた。

 必要経費というにはあまりにもであったが、問題は誰にもバレないようにしなければいけないということであった。

 下手にバレてしまうと、片桐までもが共犯になってしまい、収監されて戻ってきた時に会社はなくなっていたなどという、

「ウラシマ現象」

 になっていれば、それは完全に本末転倒になっていることだろう。

 春日井の行動はすでに片桐の想像を超えていた。見張っているつもりであったが、いつの間にか撒かれていたり、想像もしていなかったところにしけこんでいたりと、神出鬼没とはまさにこのことだった。

 そんな中で、一人の風俗嬢と懇意になってしまった春日井だったが、それは一番恐れていたことでもあった。

「遊んでもいいけど、バレないように」

 という片桐の言葉をまったく履き違えて思っていた春日井は、

「これこそ、片桐にバレでもしたら、どうなることか」

 と思い、片桐に対しては、必要以上に神経をとがらせていた。

 そのせいもあってか、他の誰かに気づかれていたことに気づいてもいなかった。

 その人は別に知ったからと言って、春日井を脅してくるわけではない。リストラなどののっぴきならない自体の時の切り札として持っておこうと思っていた。ただ、実際に使うことはなかった。こういう脅しネタは、賞味期限が来るまでに食べてしまう必要がある。しかも、その賞味期限は、実に短いものだった。

 そんな彼が風俗嬢に入れあげることになったのだが、そのことが片桐にとっての切り札にもなったのだが、片桐は中途半端な思いがあり、それが彼にとって諸刃の剣となってしまった。

 片桐は目の前に見えることしか想像できなかったのだ。つまりは人間の心の中にある欲望の深さに気付かなかったのであり。

 いや、気付かなかったのであろうか、それとも目を瞑ってもいいという風に思ったのか、もしそうであるとすれば、片桐のフィクサーとしては中途半端で、しょせん大きなことのできない男だとも言えるだろう。

 そんな片桐の思いが迷いを生んだのだろう。もっと押さなければならないところを押し切れずに、しかもそれならば、徹底して見なければいけないところを見ることもできず放置のような形になってしまい、結果放任のようなことになり、相手に、

「ミイラ取りがミイラになった」

 と思わせた。

 実は問題は、春日井が増長したことではなく、彼にミイラ取りがミイラになったことを悟らせてしまったことであり、そこから王朝が始まったという一つの肝心な過程を認識していなかったのだ。

 それが自分の甘さから来ているのか、どうしても自分を信用できないという思いから来ているのか自分でも分からない。その思いが今回の事件の発端になったのではないだろうか?

 風俗嬢と仲良くなった春日井だが、春日井という男、兄をずっと見ていたことで、

「俺はあんなに不細工ではないので、きっとモテるはずだ」

 という思いが大学の時からずっとあった。

 特に工場に入ってからは、まわりの目としては、工場長の息子ということで、主任や課長はヨイショする。先輩である自分たちには何らいい思いなどできるはずがないと思わせることで、工員は少しずつ減っていった。もっとも、その方が自分に対してのイエスマンだけが残るということで、操る方としては楽だった。

 一人、纏める人がいて、後は忠実なしもべのような連中が馬車馬のように働けばいいことだと思っていたことで、実際に次第に工場は春日井の思っているように変わってきた。ちなみに、纏める人というのはいうまでもなく片桐のことである。

 彼はまるで口うるさい爺のような存在だった。だが、彼の中の小さなアリの巣のような隙間を垣間見ることができたことで、彼の目を盗むのは得意だった。片桐としては。

――どうして俺のことをこんなに分かるんだろう?

 と、春日井の洞察力に感嘆したものだったが、どうしてどうしてそんなことではない。

 春日井は、いつも不安でいたのだ。うまくいけばいくほど、

「今度はきっと悪いことが起こる」

 と不安に思っていた。

 しかし起こるのは悪いことではなく、彼にとっていいことだった。それがまた増長させるのだが、増長しながら、心の奥に闇が増えていくのだった。

 そういう意味では、春日井と片桐には似たところがある。似た者同士が追いかけっこするのである。追われる方はどこに逃げればいいかくらい分かりそうなものだ。そして同じような人間の一方が、もう一方をよく分かったとすれば、その反対派ありえない。どちらもお互いを分かり合えるということは、もっともっと考え方の性格も近い存在でなければありえないのだった。

 片桐には、ある程度まで分かってはいたが、肝心なところが分からない。その理屈は分かっているくせに、どうしてそうなってしまうのかを理解できなかった。

 要するに、すべてにおいて片桐は中途半端なのだった。

 逆に、好きなことに対しては中途半端はあり得ない。徹底的に突き進むタイプの春日井は、そういう意味では主従関係の主であり、お目付け役としてはいいのであるが、すべてのことに中途半端で、そこから脱却できない片桐は、従の立場を払拭することはできないのだ。

 そういう意味では、典型的な主従関係だと言えるだろう。

 そんな片桐の目を盗むかのように、風俗で遊びまくっていたある日、あるソープに立ち寄った時、一目惚れした女がいた。

 彼女は年齢を二十歳と言っていたが、サバを読むのがあの商売。

「二十四、五かな?」

 と言って笑うと、

「女に年を聴くもんじゃありませんよ」

 と言って、窘めるようにニッコリと笑って、彼女はそう言った。

 二度目に遭った時くらいで、すでにそんな会話をしていたかもしれない。お客として接してくれていながら、時々戒めてくれるかのようなその口調が妙に心地よい。すっかり、春日井は彼女に嵌ってしまった。

 源氏名は「睦月」と言った。

「私一月生まれなのよ」

 と、想像通りの回答に、まるで自分が名付けたかのような悦びを感じた。

 彼女に対して性欲を感じるよりも、年下なのに、まるで姉を見ているかのような安心感が彼にはあった。

 性欲を見たそうとすると、行為が終わった後に襲ってくるやるせないような罪悪感。だが、それも数回で慣れてしまった。

 だが、店に寄ってから、指名した相手が現れるまでのドキドキ感が慣れることはなかった。これが風俗通いの醍醐味であり、

「どうして風俗に通ってくるの?」

 と訊かれた時、

「一言でいうとすれば、癒しがほしいから」

 と答えるだろう。

 癒しというものを一口では説明できないし、説明するために頭の中で組み立てようとすると、話をしているうちに支離滅裂になってしまうことが分かっているので、お店に入ってきて癒されたい場合はじっとしているのが心地よいくせに、ついつい会話が弾んでしまう。この時に感じるのは、

「会話には相手があることだ」

 という、実に当たり前のことであった。

 この時にもう一つ感じたのは、

「自分が悪いことをしているとしても、他人が同じことをしていても、なかなか気づかない」

 という思いであった。

 今までの春日井がそうだったのだが、それまで風俗というものをどこか、遊び以外には見ていなかったということを自覚しながらも認めたくない自分がいたことをウスウス気付いていた。

 その中でいかに自分を正当化しようかと考えていると、出会ったのが睦月だったのだ。

 彼女は自分を飾ることもなければ、相手が客だからと言って、悪いことは悪いとハッキリ言える女性だった。

 初めて相手をしてもらった時、今までに何度も風俗経験があることで、勝手にベテランのように思っていた自分の鼻先を折られたような気がしたのが、睦月との出会いだった。

「あのねえ、どうしてそんなに俺を責めるんだよ。俺は客だよ。君たちは客を満足させてなんぼなんじゃないのかい?」

 と訊いてみた。

 それはあまりにもベテランだと思っていた自分のプライドを傷つけられるような相手をしていたと思ったからだ。

「いいや、そんなことはないさ。相手の伸びきった鼻を叩き追ってあげるのも、勇気というものさ。それにね、私は気に入った相手でなければそんなことはしない。どうでもいい相手だったら。あんたのいうような相手をして、それまでさ。相手ももう白けて私を指名したりなんかしないだろうからね」

 と言っていた。

「俺を気に入ってくれたということかい?」

「そうだね。正確には気になると言った方がいいかな? 気に入るよりも格上なんだよ?」

 と睦月は言った。

 言われてみれば、

「確かにそうだ」

 と感じた。

 その会話があってから、睦月をお気に入りに入れ、数日に一度は会いに行ったものだ。

 睦月も次第にその気になってくれたようだが、春日井が彼女に対して、お店の中でも風俗嬢の彼女の後ろにハッキリと本当の彼女を垣間見るようになったその時、

「睦月ちゃんは辞めちゃったんですよ」

 と言われてしまった。

「えっ?」

 と言って、途方に暮れるしかなかった春日井だったが、いなくなった理由を、

「自分のせいだ」

 と思って、しばらくショックを抱えていたが、そのショックは次第に膨れ上がる一方だった。

「恋の悩みは時間が解決してくれるなんて、ウソじゃないか」

 と感じた。

 今までに何度も女の子と付き合ってきたが、こんな気持ちになったのは初めてだった。どのように感じて行けばいいのか分からずに、今までの恋愛が薄っぺらいものであったことに気づかされた。

 今度の方が、相手をソープ嬢と思い、甘く考えていた自分が情けないと思うようになった。

「要するに何が大切なのかということを分からなかった自分が一番悪いんだ」

 と思い、それからしばらくは、風俗に通うこともなくなった。

 ただ、その代わり、キャバクラなどにはよく通うようになった。元々ちょくちょく通ってはいたが、

「今までの春日井ちゃんとはまるで別人のようね」

 と女の子が控室で話をしていた。

「何か落ち込んだかと思うと急にテンション上げてみたり、まるで失恋したみたいじゃないの」

 と、さすがにオトコを見る目がある彼女たち、彼女たちにかかれば、春日井程度の男であれば、少々のことなら分かってしまうというものだ。

「でも、あれが本当の春日井さんだとすれば、私あの人悪くないと思うのよ。顔立ちも整っているし、決して怒るようなことはない。気持ちにゆとりさえできれば、きっとついていくにはいい人なのかも知れないと思うの」

 と、一人のキャバ嬢が言った。

「確かにそうね。裏表はなさそうな気はするんだけど、気の性かしらね?」

 と一人がいうと、こういうことには、うんちくをいつも語っているアキという女性が案の定、口を挟んできた。

「春日井さんは、見た目があんな感じでしょう。だから、女性としては賛否両論があると思うのよ。顔は少し引いてしまうほどだけど、コンプレックスを持っている。その代わりに、人には優しいと思う人ね。でも、逆にそのコンプレックスが異常な性癖を目覚めさせるんじゃないかと考える人の二つね。そして女性にも二種類がいる。彼を可哀そうと思って、母性本能を擽られる人、そして彼の異常性癖に閉口してしまう人ね。でも、私たちって、結構、人のアラを探すよりも、人のいいところを一つでも探そうと試みるでしょう? それが春日井さんのような人に対してどのように感じさせるか。自分に気があると思ってしまうのか、それとも、かわいそうに思ってくれていると分かっていることで、さらに同情を誘おうとするか、どっちなんでしょうね?」

 とアキは言った。

「私は、同情しちゃう方かな? 好きになるかどうかは別にして。でも、あの人、話をしていると結構楽しいのよ。だから、放っておけないって気になっちゃうのかしらね」

 と、最初に彼の話題を出した女の子が言った。

「私が一つ感じていたのは、あの人にお友達っているのかしら? っていう思いなの。元々無口なんだけど、他人のことを決して話そうとはしないのを見ていると、ひょっとすると自分が怒りっぽい性格だということを分かっていて、それで争いを起こしたくないから、他人と関わらないんじゃないかって思うの。だけど、こういうお店だったら、お金を払えばお話だってしてくれるじゃない。楽しませてくれようとするのを感じて、それで満足しているじゃないかとも思うことがあるの」

 と、もう一人の女の子が言った。

「じゃあ、今日の春日井さんをどう思って?」

 とアキに言われて、彼女は、

「そうね。ひょっとすると、唯一、話ができていた人が、いなくなったんじゃないかしら? だから、あんなに寂しそうなんだけど、でも、まわりから人がいなくなることに慣れているのか、それとも感覚がマヒしているのか、どういう感情になっていいのか、分かっていないような気がするのよ。それだと、とてもお気の毒な気がするわ」

 と話をしていた。

「ひょっとして、春日井さんを好きになっちゃったんじゃないの?」

 とアキに言われて彼女はドキッとした。

 彼女の名前はゆりなという、ゆりなは少し考えて答えた。

「それがよく分からないのよ。私はどちらかというと惚れっぽい方で、好きになったと少しでも感じると、そこから加速度的に相手を好きになっていくのよね。でも、今度は春日井さんのことを好きになれそうな気がするんだけど、一気に盛り上がってくることもないの。いつもと違っているから、私自身戸惑っているの」

 と恥じらっているかのようなゆりなだった。

 ゆりなというのは、今年、二十八歳になっていた。このお店に勤め始めてから、三年ほどが経っていた。ベテランの域と言ってもいいだろう。

 ゆりなという女の子は、キャストの中では実に平均的だった。指名も、常連も、同伴も、アフターも、順位にすれば、本当に平均的だ。すでに店では若い子が増えてきたので、そろそろ下火になってもよさそうなのに、最初からずっと平均的な彼女は、男性スタッフからも、

「ゆりなさんがいるから、キャストの均衡が取れているんだよ」

 と言われ、

「いやあね。それって皮肉?」

 というと、

「そんなことはないさ。どこにでもいる存在というのは、逆にいうと、絶対に必要なという意味だからね。扇のかなめとでもいえばいいのかな?」

 と言われて、それほどでもない気分になっていたゆりなだった。

「春日井さん、本当に心配だわ」

 と言っていたゆりなが、翌日、春日井と同伴してきた時は皆驚いた。

 アフターはあっても、同伴はなかった春日井がどうした風の吹き回しなのか、とにかくゆりなは得意げであった。

 あらたまって自慢げな態度は取らないが、満足気な表情が、彼女の感情を物語っている。初めて、平均的な女の子が目立った瞬間だったが、却って心配になる男性スタッフもいて、春日井の本心を知りたいと感じていた。

 前の日の落ち込みはどこ吹く風、たった一日でどうしたというのだろうか?

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