第四十四狐 レナの覚悟

 大変まずいことになった。今何が起こっているかというと、マナが神格奥義を発動して、それに対して龍星天下で対応してるが、いつまで持つかと聞かれたらもうあと一分もいかないだろう。それは、相手が7属性の極太レーザーを360度の四方八方から打ち込まれており、それを弾けるかといったら、答えは否。私の持つ属性である火、氷、闇では対応できない属性があり、それは避けないといけないのだが、360度から攻撃が来ているのだ。避けることができない為、気合で受けこらえているのが現状である。


「お姉様! そんなものなの? 私はまだまだいけますわ!」


「まだ……、いけるよ……。」


 ずっと撃ち込んでくるマナの様子は、あれである。一体どうしろと? もう正直限界である。集中を切らしたら、大怪我じゃ済まないと思う。


「痛っ?!」


 言ってるそばから、レーザーを膝に掠める。手に集中を入れようとするも腕が震えていて、まともに黎桜を握れない。


「終わりかしら? お姉様!」


 あっ、終わった。正面から来る極太レーザーを避けようにも膝を痛めていて、薙ぎ払おうにも腕が震え、魔力も殆ど底を尽きた。私は、そこで試合を放棄しようとしていた……。


「…………。」


 ごめん……。レナ……。


(諦めないで下さい!)


(今更なんだよ……。もう身体はまともに動かない。魔力もほぼゼロ。身体強化の魔法も効果がなくなった。もうボロボロなんだよ。勝てるわけ無いじゃん)


(だからなんですか? 一緒に勝とうと言ったのは貴女です!)


 もう、手遅れなんだ。身体が言うことを聞かないんだ。


(勝ちたかったのではないのですか!)


 勝ちたかったさ。でももう無理だよ……。


(無言にならず何か言って下さい!)


(……)


 返す言葉が出てこない。彼女の言っていることは正論だったから。


(魔力がないのなら、私を使って下さい!)


(…………、は?)


(私の魂を使って魔力を絞り取ってくださいと言っているのです!)


 できない……。それは多分、レナを殺すということだから。


(やりたくないと思っていると思いますけど、このままだと二人共死んでしまいます!)


(分かってるよ! でも……)


 殺したくない。もう大切な人の死を見るのは嫌だから……。


(そこまで意固地なのなら、もう自分で絞り取ります!)


(やめろ!)


(いいや、やめません。絶対)


 魔力が大幅に回復し始めるのを感じる。やめて……。


(ここが最後の正念場です)


 身体の中にある何かが消えていく感じがする。やめてよ……。


(だから……、絶対に勝って下さい)


 やめてって!


(さようなら)


(レナ!)


(日香ちゃん……。貴女のことが好きでし……)


 そこで声が途切れて聞こえなくなった。


「あっ……」


 見殺しにしてしまった。何もできなかった。私はまた……。


「あぁぁぁぁぁぁぁ!」


 私の中で一本の線がプツンと切れた音がした。


○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○


マナ視点


「あぁぁぁぁぁぁぁ!」


 今度こそ追い詰めた。勝てると思った。でも、私の最大火力の極太レーザーが何かでかき消された。


「《与えるは絶望。全てを見下す黒き翼》」


 詠唱!? もう魔力がないはずでしょ!? それに今の時代で詠唱をするとしたらまさか!?


「《近づくものには無限の破滅を》」


 姉の姿にドス黒い魔力写る。


「《逆らうものには永遠の地獄を》」


 獣の姿をした少女に漆黒の黒い翼が生える。


「《我は堕天の王なり》」


 とんでもない威圧感が背筋を伝う。これまでの人生でこれより怖いものは存在するのだろうか。


「《神格奥義【絶命・滅殺領域】》」


 彼女は怒りを露わにしているように見えた。


―――――――――――――――――

あとがき20

1週間で『獣化転生』を四話、『凡人少女』を三話公開しました。これからも不定期が続くと思いますが気長に待って、楽しく読んで欲しいです。

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