第四十ニ狐 覚醒?

日香視点

 意識が現実世界に戻る。もう何度も経験した感覚。身体を起こし、立ち上がる。


「【アタック】【スピード】【ディフェンス】」


魔力を身体中に張り、強くする。


「【ファイアエンチャント】【アイスエンチャント】」


刀身に熱気と冷気が纏わり付く。


コトッ


 一歩。義妹に向かい、足を地に踏む。


コツッ


 二歩。彼女が後ずさりを始めるが気にせずに、歩を歩める。


カタッ


 三歩。そこで足を止め、顔をマナに向けた。


「第二ラウンドだ……」


‘‘覚醒’’


 二つの眼球に本来の色が染まった。


「な、何度でもやってあげる! 七星【サンライトオーバーレイ 流】」


 さっき、レナが防げなかった技。四方八方からの攻撃には……。


「火炎【命連】」


 氷炎を纏う黎桜を様々な方向にあり得ない速度で振るい、振った軌道に炎の道が出来上がる。それは、だんだんと自身の周りを覆った。


「何なのよ!」


 驚愕の声をあげるマナの声が響き渡る。会場全体の冷めた空気が再度盛り上がりを見せてきた。


「さっき、学んだんだ。奥義にも、応用が聞くことを……」


 炎の膜を突き破り、ただひたすらに突っ込んだ。


「七星【サンライトオーバーレイ 散】」


 集結した無数の七色の光がマナを中心に広がっていく。


「火炎【焔】」


 私は、目の前に来る最低限の攻撃を切り落とし、迫っていく。


「行くよ。氷雪【氷結世界 閃】」


 さっきの試合の変人による、奥義の応用。今戦っているマナの奥義の変化。私はそれ等を元に、奥義に変化を加えた。六本の氷剣は十二本に増え、長い刀身が短くなり、短剣となった。


「七星【サンライトオーバーレイ 剛】」


 マナは守りを固める為、光を纏った。高速の氷剣の連撃は当たるが、威力が足りない。せいぜい薄く削れるだけであった。


「【サンフレア】」


 私の氷を溶かすため、小規模の太陽を作り出す。しかし、氷剣は溶けることはなかった。奥義と通常魔法とでの差で起きた現象である。


「火炎【炎帝無限牢獄 追】」


 負荷が更に掛かる。でも、こうでもしないとあの硬い鎧を削ぎ落とせないと思ったからだ。


「ハァハァ ハァハァ」


 息が苦しくなる。空中で発生する炎帝がマナに向かって飛んでいく。マナは避けたり相殺したりするが、あくまで無限に続くので、相殺しても意味がない。また、避けても追いかけて来る。


ドゴーン ドドドド


 とうとう一発あたり、連鎖して爆発が起きる。爆発による煙幕が溢れ出すとき、炎帝無限牢獄を解いた。


「はぁ……はぁ……痛いわね……」


 そこには煙を払う、ところどころが砕けた光の鎧を纏うマナの姿があった。


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