第四十一狐 無念惨敗

 コロシアムの中は熱い歓声で盛り上がってきた。


 決闘開始から数分。それだけでも長く感じる戦いに高揚感が湧いてきた。


「【アイスランス×8】」

(【爆炎】)


「【ライトニングシャワー】」


 こうして、魔法を打ち込み合い相殺しかしていないがそれでも、この時間が楽しく思えた。


「しつこいわね」


 しかし、マナはそう思ってくれないらしく、私は呑気に頬を膨らませていた。


「もう一気に行くわよ!」


 相手の気迫に、思考を戻される。私は、受け身の体勢に入った。


「七星【サンライトオーバーレイ 集】」


 マナから発せられる七色の光は、太陽のように輝かしく、月のように美しかった。正面、左右更には、上空から来る光の雨に打たれながらも黒刀を振るい、少しでも当たる数を減らす。しかし無限の如く降り注ぐ光に私は、膝を着いてしまった。


(【ファイアウォール】【アイスウォール】)


 日香さんが必死に壁を張っているが、すぐ崩れてまた身体に降り注ぐ。攻撃が止んだ瞬間、私は地面に倒れた。


「あぁ、やっぱ勝てないなぁ」


 悔しかった。負けたのが悔しかった。どうやっても勝てない相手だと分かっていても、善戦できたからこそ悔しかった。


(後は任せて)


 その声に、私は本来の力を彼女に与えた。

 

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○


マナ・グライシス視点

 奥義を使って、勝ったと思った。それなのに、傷だらけなのにあいつはまだ立ち上がる。


「……?!」


 一歩、また一歩と迫る。彼女の姿に恐怖を感じてしまい、足が思うように動かない。彼女の剣に相対するであろう、炎と氷が纏わる。謎の多い力にさらなる恐怖が重なっていく。


 さっきまでの戦闘で感じられなかった圧迫感が背筋に伝う。私は目の前のお姉様ではない。また、別の存在と戦うことになった。


「第二ラウンドだ……」


 その時、姉の姿をしたあいつに、豪炎のように燃え盛る赤い右目と極寒の地の氷河のような凍える薄い青の左目が見えた。


○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○


グーナ・グライシス視点

 誰もが決着が着いたと思っていた。レナが地面に倒れたから。でも、レナは立ち上がり歩を進めていた。娘の姿の裏に何か強大な何かを感じていたが、今ははっきり見える。影の中の化身が……。


○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○


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