第三十七狐 扱いの差

レナ(日香)視点

「どうしようかなー」


(だね~)


 あの後、騒ぎを聞きつけた両親が来て、決闘は私も両親も断ろうとしたのだが、マナには伯爵家のグレリアがいたから、説得も上手くいかず断れなかった。その上、勝った方のお願い事を叶えるということになってしまった。試合は王都東部にあるコロシアムで三日後にやることになった。


(手を貸す?)


(ありがとうでも、私が限界までやったら交代の方がいいかな)


(でも、やるときは一緒だ。だから一緒に絶対勝とう)


 実際、私が出たら勝てそうだと思ったのだが、レナの情報だとマナちゃんは運動神経バツグンで使える属性が7属性ととんでもないチートっぷりで、しかも剣術も嗜んでるのだとか。協力していくのは大事だと思う。


(マナよりも私の方が弱いけど、私の居なかった4年間でどれだけ強くなったのか知りたいから……)


 そっか、そうだよね。曲がりなりにも、レナの妹だもんね。だから私は全力でサポートしなきゃ!


(レナあのね、実は――――)


 私は、レナと考え合った。奥義も無しでどう立ち向かうか、どんな魔法があるかを想定してどう対応するのか、そして寝ている間の精神世界で魔法の練習をして、現実ではより早く動けるように。そして、獣人の身体を慣らすために……、当日までやれることを全てやったつもりだ。


✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼


レナ視点

決闘当日:王都東部コロシアム


 朝からコロシアム入口には人が集まっていた。その理由は……


「寄ってらっしゃい! 見てらっしゃい! 今日は、コロシアムで決闘をやっているよ!」


 会場付近で人が集まり、宣伝をしていた。


「次の賭け戦で対戦するのは、4年前に失踪したグライシス男爵家姉妹の姉である漆黒の少女。レナ・グライシス!」


 いくらなんでも説明酷くないですか?


「それに対し、戦うのはその妹でる七色の天才少女。マナ・グライシス!」


 紹介するときのこの差はなんだろうか……。4年の間に何があったのかでしょうか?


「賭けの倍率はレナ・グライシスが7倍。マナ・グライシスが3倍となっています! さあ、賭けた賭けた!」


 私の妹が優秀なのは認めるけど、私を過小評価し過ぎではないだろうか。そう考えてると、後ろから人が来る気配があった。


「レナさん! 久しぶりです!」


 振り返ると、鉄の鎧をつけた顔がそれなりにいい少年と、それに付きまとう3人の少女がいた。


「えっと……、どなたでしたか?」


 正直私には、彼らと会った覚えはない。日香さんは、会ったことがあるような、ないようなと思考している。


「やだなぁ、リフレシアで助けて頂いた。ガイです」


(あ〜〜! 思い出した! ゴブリンの群れに襲われていた子達だ!)


 日香さんがガイさん達のことを思い出したようで、私にどのような人達かを教えてくれた。


「じょ、冗談ですよ。冗談」


「そうだよな! レナさん聞いてくれよ! あの後頑張ってさ、昨日俺たちEランクになったんだ!」


「それは、おめでとうございます。私も別れた後ランクが上がって、今ではBランクです」


「B……ランク……」


 それを聞いたガイさんは、ちょっとした放心状態となってしまったが、理由が分からない。


(あの……レナ。ガイと冒険者を始めた時期は同じだけど、今のはガイからも他者からも見たら、煽りに見えるから……)


 冷や汗が額から出てくる。発言を間違えた私は、恐る恐るガイさん達の方を向く。


「ちょっとガイ! レナさんならBランクなんて、速攻でたどり着ける実力だったじゃない!」


「ガイ君そうだよ〜。だから元気出して〜。あ、決闘の方頑張って下さいな。レナさんに私達賭けたので!」


「ラミ! レナさんにプレッシャーを掛けない! それと、頑張って下さい」


 私を応援しながらガイさんを貶しているようにみえるけれど気の所為だろうか。私はワイワイやっている彼らを手を振って、コロシアムの入口に入っていった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る