第三十五狐 過去の日常

「それでですね。ヘルズさんが――」


 思い出を話すのは楽しいけど、口調を戻したり、ボロを出さないようにするのが大変である。


 ゴーン  ゴーン


 時計の鐘の音。針は10時を指す。


「まあ、もうこんな時間。そろそろ寝ましょうか」


「分かったわ、お母様」


「それでは、おやすみなさい。お母様、お父様」


「ああ、おやすみ」


 私は部屋からすぐさま、早足で精神世界で確認して覚えた。レナの自室に戻る。


「はあぁぁぁ」


 大きくため息を1つ。私は、想像魔法で精神世界にいるレナと連絡を繋ぐ。


(お疲れ様です。レナさん)


(そりゃどうも。結構疲れたよ……。話し方を気をつけて、ボロを出さないように言葉を選んだけどね。それと、ドレスが動きにくい……)


(それは……、ご苦労様です)


 レナは、自分が悪いことをしたような言い方で返してくる。


(いいの。私がやりたいからやっただけだし)


(あっ……、はい……)


(それと、明日の朝にはレナの意識は現実世界の方に来るから。もし困ったことがあったら想像魔法を使って呼んでね)


 そう言葉を残し、ふかふかのベットで眠りについた。


✼○✼○✼○✼○✼○✼○✼○✼○✼○✼○✼○✼○


レナ(本来の魂)視点

 世界が変わる。精神世界から現実世界に。ベットから起き上がり、寝巻きから、ドレスに着替える。ドレスと言っても、大きな尻尾のせいで上手く着こなせないし、へたに動けない。そのことでこの体が不便に感じた。


 着替えた後は食堂で家族と朝食をとり、庭園へ出る。誘拐される前は、毎日のように来ていた花の庭。花の香りが心地よく思う。


「いつぶりかな……。ここに来たのは……」


 庭園に舞う蝶があたりにいて、庭師が花達の面倒を見る。この景色がずっと好きだった。

でもそれは昔の話。私は今に向き合い、未来へ向かわないといけない。


「おい。そこのお嬢さん」


 その為にも、日香さんの力も借りていって、マナに勝てるぐらいにならないと……。


「聞いてんのか?」


 強くなるために、日香さんに指導してもらおうかな……。


「おい! 聞いているのか!」


「ひゃい!」


 私は後ろから来た人の大きな掛け声に驚き、大きな尻尾が逆だった。後ろから声を掛けてきたのは、白いコートを羽織る、黄色の髪の男性だった。男の白いコートには、王国の印が刺繍されていた。


「先生!」


 またしても、後ろから声がした。その正体は私の妹、マナだった。



―――――――――――――――――

あとがき17

グーナ・グライシス

アミル・グライシスの夫にして、レナ及びマナ・グライシスの父。グライシス男爵家の当主として務めを果たしている。娘てわある二人を溺愛しており、使用人には飽きられていることもあった。

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