第三十四狐 いまできること


精神世界にて


 日香は、レナの視点から現実世界を見ていると同時に、レナ自身の過去を読みあさっていた。


「魔法って、そんな法則があったのか。それに魔法の種類でこんな説明があるということは……」


 レナは奥義を使えない


 火炎【炎帝無限牢獄】も氷雪【氷結世界】も使うことができない。だって、‘‘私の魂’’に刻まれた魔法だから。


「いざとなったら手助け出来るようにしないと……」


 私は、試しに想像魔法を創り始める。創りたい魔法は、精神干渉魔法。現実の方にいるレナと連絡を取るためだ。


「闇属性をべースにして……」


 何もない世界でただ一人、途方にも暮れない実験が行われる。


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レナ視点


「……。あの、お父様、お母様。いつまで頭を撫でるのですか?」


「う〜ん。あと……「2時間!」」


 私は家に入ったあとも、使用人の人にも、執事にも、今は両親にも頭を撫でられ続けています。引き剥がしたいけど、獣としての本能? らしきもので離れることができませんでした。マナは、ずっと横で私を睨みつけていて、警戒しているのだろうと思います。


「それでレナ。この4年間どこにいたのだ? そしてこの耳と尻尾は一体……」


 やっと本題に入る。お父様達に私は、これまでのことを話し始める。誘拐されたあと、科学者に買収され実験材料に4年近くなっていて、今の姿になったこと。ヘルズさん達に助けられ、その後冒険者になったこと。そして様々な冒険をしたことを話した。でも、日香さんのこととマナのしたことは話さないでいた。今後のことのために……。


「そっか……。そんなことがあったのか……」


「うぅぅぅぅ……。でも、レナが無事でよかったわ」


「……」


 ホッとした顔をする父、涙を流して安心する母、いまだに黙って睨みつける妹。私は、それぞれの反応を見たあとに、挨拶を済ませて使っていた自室に向かって行った。


✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼


 夜になり、自室のクローゼットの中にあるドレスに着替え、食堂で4年ぶりの家族との団らん。食事を済ませ、話しが始まる。


「朝の話の続きをしたいんだ。レナの冒険の話を聞きたいんだ」


 冒険の話。ここまでの冒険は今のレナじゃなくて、日香の時のレナのものだ。だからどう話せばいいか分からなかった。


(やっほー。レナ聞こえてる〜?)


 え……、日香さんの声? 幻聴? 私はその場で頭を抱える。


「大丈夫? レナ」


 お母様が心配しているが、今の状況によって混乱している私は、わけが分からなくなる。


(落ち着いて〜、幻聴じゃないよ。今は頭の中で話しいるから)


(えっと……、こういうこと?)


(そうそう、それであってる! 今回の話、困ってそうだし私が変わるよ?)


(でも……)


(いいのいいの。それにしても復讐といっても、1人でできることにも限界があるよ。だから、頼って)


(……、分かりました。お願いします)


(了解)


 視界が暗転して、またあの世界へ意識を向かわせる。


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レナ(日香)視点

 さて、私達の思い出を話してあげますか。


―――――――――――――――――

あとがき17


前回の様な本型のものはたまに出てきます。


アミル・グライシス

レナ・グライシス及びマナ・グライシスの母。穏やかな性格で周りの貴族からも、民衆からも人気がある

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