第三十一狐 2つの心

「今回の指定依頼についてお伝えします」


 私はまだ冒険者を始めて1ヶ月位でBランクに上がった異例中の異例だけど、果たして私に指定依頼などできるものなのだろうか。


「依頼主は、王都の北にある。三番街の貴族で、グーナ・グライシス男爵です。」


「えっ」


 思わず、驚愕の声。依頼主の名前を聞いて、私を指定した理由をなんとなく察してしまった。


「依頼内容がとりあえず来て欲しいという、はっきりしたものではありません。期限は貴女の自由にしていいとのことで、明日の朝に来て欲しいようです。なので今日は、明日に備えて、おいて下さい。これで説明を終わります」



✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼



 先程の話から一時間後、私は手頃な宿をとって、宿泊部屋にいる。


「私は……、一体何なんだ……?」


 誰もいない空間に響く1人の少女の独り言。私は自分が貴族だったことによって1つの疑問が浮かび上がる。


「私は、どうして研究所で実験されていた?」


 疑問が溢れてくる。どうして、今になって親と思われる人に呼ばれる? どうして、私だと思った? 

様々な疑問が浮かぶが自問自答したって意味がない。やがて私は考えることに疲れて、ベットの上で眠りに付くのだった。



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「起きて……、もう一人の私……」


 一人の少女の声で私は目を覚ました。場所は、何処かも分からない真っ白の世界。転生と言われたあの空間に似ていた。目の前にいる少女の見た目は、本来転生するときの形の自分だった。


「私はレナ・グライシス。貴女の……、日香さんの今の身体の中にいる本来の魂」


「となると……、貴女は私がこの体に入る前のレナ?」


「ええ、今回お会いしたのは、1つのお願いがあるからです」


「お願い?」


「はい。それは――――


 レナが言うことは、私の思った通りで、グライシス家の娘らしい。レナには2つ下の妹がいて、親は2人とも愛情込めて育てていたらしいが、周りに姉よりも多種多様の才能があると言われた妹は、姉であるレナを邪魔に思い、レナを騙して親に何も言わずあのときの研究者のおっさんに売り渡されたらしい。その後は私が入り込んでこれまでの出来事であると。


「あの家にいる妹に因縁をつけたいの。だから一時的に身体の主導権を返して欲しいのです」


 私の人格では、レナの家族を家族とは言い難い。それに、レナ自身が真剣に頼んでいる。だから……。


「分かったよ。その分しっかり因縁つけて来てね。私はこの世界でレナのことを見てるから」


「ありがとう……。行ってくるね。日香さん」


 目の前の少女。レナの姿が薄れてやがて霧のように消えていく。


「頑張ってね」


 誰もいない世界にただ一人の少女の声が聞こえた。



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 目が覚める。久しぶりに感じる感覚。窓の外を覗けば、朝からはしゃぐ子供の声。空は青く広がっている。


「そう言えば、私もとい日香さんのステータスはどうなっているのでしょう? たしか……、ステータスオープン」



ステータス

Lv21 名:レナ・グライシス

年齢:15歳 職業:魔法剣士

称号:無し


スキル

火属性Lv10 氷属性Lv9 闇属性Lv6 空間属性Lv3 付与魔法Lv2 剣術Lv7 ユリウスの祝福 


奥義

◆◇【◆◇◆◇◆◇】

◇◆【◇◆◇◆】



「結構変わってますね。前の私と比べたらとんでもないです」


 私は、次元収納の中にある白いワンピースに着替えて。荷物をまとめ、実家へ向かう。


「日香さん。私……、負けませんから」


―――――――――――――――――

あとがき15

すいません! 本当にすいません!

投稿が予定があり、先週は投稿できませんでしたが、今回投稿する時間がだいぶ遅くなってしまいました!

詫びとして明日にもう一話と『凡人少女は嘘を吐く』の方を投稿させていただきます許して下さい!

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