第二十三狐 限界を超えて(後編)

  【氷結世界】を発動して、約30分。まだ2人は倒れず、諦めない。正直ジリ貧だが、私の体力はあまり残っていない。幸いなことに、まだこちらが優勢であることだが……。


「ふんっ!」


 最小限の動きで氷剣の包囲網を掻い潜り攻撃してくる重戦士。


「【ウォーターブラスト】」


 重戦士の攻撃を避けた先を正確に捉えて魔法を当ててくる魔術師。厄介な2人である。【氷結世界】を発動しているときは他の魔法が使えない。かと言って、他の魔法を使うほどの体力が残っているわけではない。だからこそ今の状況がきつい。魔力がほとんど残されていないのでできることも限られてくる。


「かはぁ!?」


 吐血をした。おそらく、魔力の使い過ぎであろう。これ以上は不味いと思い、【氷結世界】を解くとあたりの氷が消える。


「まだ……、諦めない……!」


 いやいややった試合だったけど、この戦いが、とても楽しい。だからこそ、負けたくない。この気持ちは相手も同じだろうか。でも両者とも限界を迎えている。ならばこれが限界の一撃だ。


「永劫龍星流……。終焉【龍星天下】」


 永劫龍星流の最終奥義。私でさえ完全に使えない技である。でも、今ならできる気がした。私は黎桜の刃を上にたて、気を纏わせる。気はつくるのではなく、感じるもの。黎桜に纏う気は大きく、やがて2つの物質へと形を変える。1つは炎に、1つは冷気に。これが私の最高の物理だ。


「ならば、こちらも出し惜しみはしない……! これが最後だ! 【アタック】【ディフェンス】【スピード】【魔力譲渡】」


 魔術師の付与魔法により重戦士の身体が輝く。


「行くぜ! 解放【爆闘士炎】」


 全てを託された重戦士の大剣が炎で燃え上がる。それは、遠くから見ている観客にも熱を感じられるほどに。


「「トドメだ」です」


 両者が飛び込み、斬りかかる。私の刀の炎と氷が混ざり、龍の形を見せ、重戦士の大剣の炎があたりを地獄のように闘技場の舞台を彩る。重戦士の大剣を刀でいなして、流れるままに相手の腕を斬る。重戦士はとっさに避けるが、少し掠める。私は止まらす、縮地で離れた距離を一気に詰める。


「【焔 龍星天下】」


 相手はとっさに大剣で防御の構えを取る。しかし、強力な一撃に重戦士の大剣にひびが入った。重戦士の男は今までよりも速く鋭い攻撃を仕掛ける。私はその攻撃をいなしたり躱したりしてカウンターを決めていく。最後の攻防は、魔法がなくても激しく、一つ一つの攻撃が強力なもので、時間が経つにつれその攻防は激しくなった。


「まだだ……」


「このまま押し込む! 【陽炎 龍星天下】」


 重戦士の一振りが私に当たったと思ったが、私は煙になって消え……、次の瞬間。



 私の刃は重戦士の首にとどき、首が跳ね跳ぶ手前で刃を止めた。負けを確信したのか、疲れたのか分からないが重戦士の男は地面に倒れ込んだ。


「お前の……勝ちだ……」


「いいえ、‘‘貴方達’’の勝ちです」


 その一言をはっしたとき、私は視界がぼやけて、地面に倒れた。疲れたな……。




 2人が倒れた闘技場、そこにはもう1人。魔術師がいた。


「……、この勝負。アルビス・グラエナとアルノス・ビーツとなります!」


「……ワァァァァ!」


 勝敗が決まった闘技場に健闘を称える歓声が広がった。



―――――――――――――――――

あとがき8

 楽しんで読んでいただけているでしょうか。もし、誤字脱字等がありましたら報告して下さると嬉しいです。これからもよろしくお願いします。それと、今回の登場人物紹介はないです。ごめんなさい。(_ _;)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る