第十八狐 霧の掟

 今想えば、この森に入ったときから、私の冒険の始まりだったのかもしれない。これまでがチュートリアルだったのかもしれない。あの記憶が幻だったとしてもいつかは、こうなったのかもしれない。


 私は依頼を受けた後、リフレシアから東に位置する霧の樹海へ向かい、現在は目的地でフォレストウルフを探していた。景色は、霧の樹海の名の通り、森全体が霧で覆われていた。その中でフォレストウルフを探すのは骨がおれるが、私には獣人の優れた耳があるので、精神を集中して、足音から何処にいるかを割り当てる。こんなこと私には楽勝なのだ!


「グルルルゥゥ」


 狼の唸り声。私は、その声を辿って東の奥地へと向かっていった。だいぶ奥へと進んだとき、私は4匹のフォレストウルフの群れを発見した。私は意気揚々とフォレストウルフに突っ込み……、


「火炎【焔】」


 フォレストウルフの首を一狩り。私に気付いた3匹は私を囲い込む。それは、翻弄するためなのだろうが、私には効かなかった。


「氷河【螺旋】」


 回転斬りと発生する氷により、残りのフォレストウルフは身体を切り刻まれ、氷が刺さっていく。フォレストウルフが動かなくなることを確認すると、討伐証拠となるフォレストウルフの牙を折る。牙は武器の強度を上げる為に使われるため、鍛治師には必要なものなのだとか。牙を集め終えた私は、またフォレストウルフの足音を聞こうと集中するため、目を閉じようとしたとき、茂みの方に白く大きい、まるで私の持つ狐の尻尾の様なものが見えた。集中をするのを止めて、茂みの奥へと逃げていった子を追いかけるのだった。


✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼


 どのくらいたったのだろうか。私は未だ追いつけずにいない。道中でフォレストウルフに出くわしては倒し、牙を折る。場所は樹海の奥地へ、景色は暗くなっていき、空はもう真っ暗になっていた。


「はぁ……はぁ……。」


 流石に獣人の身体といえど、体力をだいぶ消耗していた。目を先の方に向けると、私が追いかけていた子が、まるで私を待つ様に佇んでいた。歩きながらでも少しずつ追いかける。茂みの奥へ来たとき、私が追いかけていた子は霧の中に消え、茂みの先に一つの古くなった神殿があった。何か大変なことになりそう……。



―――――――――――――――――

あとがき3

前回の続きです。

レナ・グライシス

 今生での日香。作品中の年齢は15歳。魔法は属性で火と氷、そして闇の3つを扱う。今後の物語で何故研究所にいたのかや産まれの地が明らかになっていきます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る