第十五狐 黎桜と永劫龍星流剣術

 南の森についた私は、黎桜を構え、精神を集中させる。先の戦闘では、永劫龍星流剣術と魔法を掛け合わせた。だから、今できる型に合う魔法を掛け合わす。久しぶりに持つ刀の感触が私の葉山日香の魂を奮い立たせる。


(ッ!)


「氷河【雪崩渦】」


 後ろから不意打ちをかけてきたゴブリンを瞬時に纏わせた氷の刃で切り落とす。切った先には、黎桜からでた斬撃が氷を纏い、広がって行く。それは雪崩の様に、氷の雪崩は近くの魔物を捕まえていく。その様子は渦の様であった。黎桜を収める。すると、たちまち渦は消え魔物の残骸が落ちてくる。


「気に入った。これからよろしく頼むよ、『黎桜』」


 私は、ゴブリンの残骸から左耳を切り取り、袋に詰めていく。あいからわずゴブリンは気持ち悪いと思う。多分17体ぐらいの耳を詰め終わる。


「うわぁぁぁぁ!」


 その時、男の悲鳴が聞こえた。悲鳴の聞こえた方に、私は何も考えず向かって走っていった。


✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼


 走り始めて、おおよそ2分。私か見た光景は、4人の冒険者が大勢のゴブリンに囲まれているところだった。


「もう嫌だよぅ……」


「僕達は……死ぬのか……?」


 見た姿は少年少女の諦めた姿。その姿にゴブリン達は笑みを浮かべる。


「火炎【不知火】」


 私は、後先考えずに自分からゴブリン達の中へと突っ込む。もう、何もできずに人が目の前で死ぬのを見るのが嫌だった。流石ににゴブリンは私に気付き、一斉に標的を切り替え、私に向かってくる。


「あまいよ……、【氷河】」


 地面から突然現れる氷によって30体ぐらいのゴブリンの身体が貫かれる。残りはざっくり見て、16体ぐらいだろう。私は強く地面を蹴り飛ばす。


「火炎【飛車】」


 回転を加えた斬撃が炎の車輪となり、ゴブリンを焼き尽くす。あと11体。続けて連撃、地面についた私は黎桜を横に構える。


「氷河【螺旋】」


 回転に回転を加え、氷の刃が襲いかかる。遠くにいる弓持ちのゴブリンすら氷が襲いかかる。あと4体。


「【スピード】」


 私は付与魔法で自分の速さを上げる。私は一度、黎桜を鞘に戻す。


「【氷牙一閃】」


 常人には見えない速度でゴブリンに斬りかかる。刃は遥かに冷たく、切り口を瞬時に凍る。障害物の多い森の中、木を蹴っては飛び込み斬りかかり木にぶつかるときに蹴って、別のゴブリンに斬りかかる。残りの4体を斬った私は、動きを止める。全て終わった私は4人に視線を向ける。私の戦闘を見ていた4人は、試験のときのヘルズ達と同じような、おくちあんぐり状態だった。

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