第七狐 冒険者に

「あのですね、冒険者になるためには、試験に合格しないといけないんですよ?」


「そうだぞ。しかもここの試験監督はすごく強いからな。だからやめといたほうがいい。」


「それでもやります」


 二人にやめといたほうがいいと迫られているが、初めて自分のステータスを見たとき、冒険者になろうと思った。だから、私には止まるつもりはない。


「そうですか……。怪我しても知りませんからね」


 受付嬢は呆れながらも忠告をした。私は受付嬢に案内され、地下の闘技場へ向かう。後ろには酒坏の心のみんながついてきていた。


「お前が冒険者になろうと考えているバカか……」


 闘技場の中心にいる男が迫力のある雰囲気を醸し出す。


「よろしくお願いします」


 構える。私は拳を、男は斧を。


「試験……始め!」


 合図とともに両者が駆け出す。剣は持っていない。だから私の今出来ること、それは魔法。私の手に熱が籠もる。見せてやる……。火属性Lv10の力を。


「【炎帝】」


 手に灯る炎は小さくとも、強力だった。炎は巨大な爆発を引き起こし、部屋は黒い煙に包まれる。そのなかで、私の攻撃が炸裂する。


「【アイスランス】×10」


 煙で見えなくても、獣人になったことで優れた聴力を得た。私は、その聴力で足音のする方に氷の槍を放つ。


「ぐっ?!」


 ビンゴ。男の声が漏れる。煙が晴れたときに見えたのは、身体に氷の槍が何本か刺さった男がいた。


「お前……。凄えな、見直したぜ、嬢ちゃん。あんたの名を教えてくれ……」


 男は氷の槍を抜きながら私に質問をする。


「相手に聞くよりも先に自分の名前を言って欲しいのだけど」


「すまないな。俺はガロン・マグルス・マインだ」


「分かった。ガロンさんだね。私は、レナ・グライシス。さて……」


「「勝負の再開といこう」」


「【地撃】」


 ガロンは斧を振りかざし、地面に衝撃波が流れる。私はそれを跳んで回避し、魔法を放つ。


「【黒炎】」


 闇と火が混ざり黒い炎が一瞬にして膨れ上がる。ガロンは斧でそれを叩き斬る。


「まだやれるな?」


「勿論」


 激しい攻防が続く。闘技場はすでにボロボロになっていた。


「すいません」


「なんだ、エリーナさん」


「貴方方はことあるごとにとんでもないものを持ってきますね。」


「それほどでも」


「褒めてません」


 受付嬢と酒坏の心の五人は、ガロンとレナの戦いを見て、現実逃避を始めていた。

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