第五狐 街に着くまで


(恥ずかしかった…)


 私の顔は赤面していた。今、冒険者の町リフレシアの門で馬車から降りたところであるが、何故こんなことになっているかは、30分くらい前のこと…。



 それは馬車での出来事。

「ねぇねぇ。レナ」


 アリサがこちらに声をかける。

「アリサさん。どうしましたか?」


「獣人になったということは、耳と尻尾は本物だよね?」


「おそらく本物かと…」


 アリサの質問に適当に答える。今は一連の出来事で疲れていたからだ。そして、次の瞬間アリサは思いもしなかった言葉を発した。


「レナの尻尾をモフっていいかな?」


「ダメです!」


 アリサの言葉に思わず反応し、自分の尻尾を抱えた。自分の尻尾はとても触り心地が良く、少しくすぐったい。


「そんなこと言わずにさ〜」

「ひゃう?!」


 アリサは我慢が出来なくなったのか。私の抱えている尻尾を触りだし、私は声をあげた。笑顔で満足そうに触り続けるアリサだが、私にとっては洒落にならなかった。そこに、アーナも興味津々なのか、耳のなかに指を入れて遊びだした。


「やめ……やめてぇぇ……」


 変な声を出しながら抵抗する。しかし、二人はやめてくれず、ヘルズとバイソンは私達の様子を見て笑っていて助けてくれない。私は二人に街に着くまで尻尾と耳で遊ばれていた。



 それが、馬車での出来事だった。

 そして現在に戻る。


「レナってば、ごめんって」


「ごめんね〜」


 二人が謝罪してくるが、レナは尻尾を逆立たせ、赤面していた。二人はそれが可愛らしく見えたのか、ニヤついていた。


(ほんとに覚えていやがれよ……)


 私は、いつか二人に仕返しをしようと思ったのだった。


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