第25話 春秋時代の魅力
私は中国史が好きで昔より本を読み漁っておりますが、一番好きな時代はと問われれば… 紀元前の春秋時代を挙げるでしょう。
周王室を筆頭に様々な権威が揺らぎだす中、都市国家クラスの小国も含めれば優に数百もの国が時代の波に揉まれながら興亡を繰り返す三百年余…
特にその後に続く戦国時代とはまた違い、権威も道義も揺らぎはすれど未だ地には墜ちず、実力主義の風は吹けどもまだ強固な伝統の壁を吹き飛ばすには至っていない… そんな半端さがもたらすのか、何処か他には無い雰囲気が漂っている感のあるこの時代は、私にはたまらなく魅力的に感じられます。
「スッポン汁を巡る軋轢により国が滅んだ」
「羊肉のスープを巡るトラブルで戦に大敗」
「蛮族に攻められた際、領民を兵士として動員しようとしたら『鶴を使え』と拒否された」
「君主が領内視察に出かけた際、留守中に都が隣国に攻め落とされて人々が連行されており… 帰ってきたら無人になっていた」等々。
必ずしも春秋ならでは、とまでは言えませんが、何れも見ると思わず「春秋時代だなあ」と感じてしまう出来事です。
ただこの時代は戦国時代ほど「判り易くない」為か、時代も連続している戦国に何かと「喰われがち」な為か、面白い割には人気が今一つな気もします(例えば「春秋・戦国時代」とタイトルに入っている本の場合、感覚的に両時代の割合は良くても2:8くらいの印象が)。
基本史料となる「春秋左氏伝」にしても、山の様に国や人物が出てきますし、必ずしも取っつき易いとは言えないでしょう。
しかし春秋好きの私からすれば、一度壁を乗り越えてしまえば、噛めば噛むほど味わい深くはまってしまう… そんな興趣に満ちた時代と言えるのではないかと。
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