第19話 「英雄未満」源三位 ~史実編~

治承4(1180)年、源三位頼政、以仁王を擁し挙兵。

それ自体は短期間で鎮圧され、自身も自害に追い込まれるも、ばらまいた王の令旨が各地で反平家の挙兵を誘発。結果的には治承・寿永の大乱の先駆けとなり、最終的に「全盛を誇った平家の滅亡」という事態をもたらしたという、まさに歴史を動かした一石を投じた方と言えます。

しかし、『平家物語』の「源氏揃」の章で、平家の専横に怒り、各地の源氏の名前をずらりと挙げて以仁王に決起を促した彼の姿が実像かと言えば… やはりそう格好よくは無い様で。


この辺り、色々関連する本を読んでみたのですが、どうも彼が主体というより、経済的に深く結びついていた八条院の猶子であった以仁王に巻き込まれた、と言った方がより実際に近い感じに思えます。

何となく、功成り名を遂げて隠居していたにも関わらず、義理と生活の為に厄介な争いに巻き込まれてしまった彼の「喜寿にもなって、なんでまた…」といった感じの、内心のぼやきでも聞こえてきそうなお話です。



ただ、いかに意に染まぬ事でもやるとなれば手は抜かず、ぼやきながら見事にこなしてみせるのも、また源三位。

以仁王の決起計画が漏れた際、その討伐軍の大将の一人に息子の仲綱が指名されるぐらい挙兵準備の秘匿に成功していた手腕といい、いざ戦いとなれば以仁王を南都の反平家勢力と合流させるべく落とし、自身は寡兵で討伐軍本隊を巧みに足止めしてみせた妙手といい、最期は離反者を出す事も無く一族郎党壊滅するまで激しく戦って見せた統率力といい、流石は歴戦の古強者といった感じです。

…もっとも、そこまでして落とした以仁王が、あと一歩で合流というところで討たれてしまった、というオチがつく辺りも、やはり源三位ぶりなのかも知れませんが。



まあ何はともあれ確かな事は… 私がそんな源三位の表にも裏にも実に心惹かれる、という事でしょうか。

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