第12話 鎌倉幕府の成立年代に関する私見
一時、教科書での記述の変化の事例として「鎌倉幕府の成立年が1185年になった」という話が随分と取り上げられた気がします。
今現在でも1180~1192年の間の複数説の中で最有力と聞きますが、個人的には最初に聞いて以来、何故こんな半端な年代を… という思いが頭から消えた事はありません。
無論平氏という最大の敵対勢力を滅ぼし、義経を巡る騒動を契機に朝廷に守護・地頭の設置を公認させた、という事実は重要であり、頼朝政権にとって一つの大きな節目の年であったことについては間違いないでしょう。
ですが、頼朝が鎌倉に入り中央の統制を受けぬ独自の権力機構を立ち上げた「1180年」という実質的な始まりの年と、征夷大将軍という、以後長きに亘り武家の棟梁の象徴たる意味を持つ事になる職に補任され幕府の名実が揃った「1192年」という形式の完備した年という両者に比べると、あまりにも根拠が弱いのでは、と…
結局のところ、成立年代に細かな異説が絶えぬのは、本来は議論の叩き台となるべき「幕府の定義」に多分に曖昧な面があるため、各自が自分の「定義」を元に論じているが為、という気がしてなりません。
「幕府の定義を整理し、鎌倉幕府の成立年を見直した。ではそれに合わせ室町・江戸幕府の成立年も見直そう」といった話も聞いた事がありませんし…
なお、私個人の見解としては、昔は形式重視で「1192年」を推していましたが、今現在は実質重視の見地から「1180年」が一番妥当だと思っております。
中国王朝の成立年などは全て最初に自立の旗を掲げた時からですので、知らず知らずのうちにそんな影響も受けたのでしょうかね。
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