第6話 始皇帝の評価に対し感じる、引っ掛かり

世間的に高く評価されている人物だが、自分では今一つその評がピンと来ない。

そんな事は誰しもあるとは思うのですが、私にとってその代表例はと言うと、やはり始皇帝になるかと思います。


戦国七雄の争いを征し、初めて天下を統一した。

皇帝制・郡県制など、二千年に及ぶ中華帝国の原型を作った。

貨幣や計量単位を統一し、万里の長城ら歴史に残る大事業を行った、等々…


無論これらは見事な業績ですし、それを一概に否定する気も無いのですが、どうも誤解を含んでいたり過大だったりする部分も少なくない様な気が、個人的にはしてなりません。

どうも誉め称えるには、引っ掛かる面が多く…



例えば天下統一については、「他の六国を次々と滅ぼして…」などというと、彼がまるで熾烈な争覇戦を勝ち抜いて成し遂げた様な印象を受けると思うのですが、実際の所、彼が即位した時点で天下の半ば程は秦の領土、争覇という意味でも曽祖父・昭襄王の時代に、勝負付けはほぼ終わっていたという面が、余りに軽視されてはいまいか、とか。

また彼が始めた郡県制らの諸制度についても、彼がグランドデザインを引いたとしても、それはあまりに拙速・原理主義的で実用に耐える強度が欠けており、定着の功は諸制度を現実路線に落とし込みつつ、時間を掛けて整備し続けた漢帝国の人々に帰する面が多いのでは、とか。

そして、彼の死後に秦帝国があまりにあっけなく瓦解した事も、直接的には趙高や胡亥らに責任が帰するとはいえ、通算25年の在位期間(統一時から数えても11年)という時間がありながら、結果として死後3年しか持たない体制しか作れなかった事には、当然彼の責任も免れないのでは、とか。


何よりあれだけ韓非子を激賞していたにも関わらず、ある意味彼の論の根本たる「全ての人間が法に縛られる統治」の中で、自分だけは埒外の様に行動していた態に見える辺りが、個人的には非常に引っ掛かってなりません…

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