第4話 源義経の軍事的才能についての一考察
源義経という人物はどう評価すれば良いのか?
昔は「政治的センスは皆無の戦の天才」という評価で、特に悩む事も無かったのですが、以前「平家物語」(講談社学術文庫)を全部通して読んだのを切っ掛けに、軍事面についても改めて考える様になりました。
要は彼の成功というのは、天才的な才能によるものと言うより、概して結果オーライの類ではなかろうかと。
例えば屋島の平家本隊を急襲して海に追いやった場面にしても、彼の天才ぶりを活写する態の「平家物語」からして、決定的な戦果となった内裏焼き討ちが義経の指示ではなく、参加していた古強者の後藤実基の独自判断とされている辺り、義経の大将としての力量に疑義を抱く一件ですし、よくよく考えてみれば義経の常識を覆した見事な奇襲として語られる強風を押しての渡海強行からして、「通常三日掛かる所を六時間で行った」というのは、海の怖さを知らない素人の無茶がたまたまうまくいっただけのことでは無いか,等々…
有名な一の谷の戦いでの鵯越の急襲も、実際にあったかどうかという話から実は多田行綱の活躍が義経の物にされた、などと諸説あるようですし、結局の所、どう判断するのが適切なのやら。
かなり昔何かの本で、「ジャンヌ・ダルクが奇跡的な勝利を重ねる事が出来たのは、彼女が当時の軍事常識や儀礼を全く知らず好き勝手やり、それが相手にとっては完全な奇襲となった為」といった様な話を読んだ覚えがあります。
その論が果たして正しいのかは存じませんが、「平家」でしばしば見られる彼の「非常識な行動」の様を見て、私がふとその話を思い出してしまった事は、紛れも無い事実です。
「幸運児義経」。個人的にはそれが現段階での彼に対する暫定的な評価なのですが、さて。
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