第5章 ~焦燥~

 

 sideC:itsuki koizumi & kyon

「本当ですか、白鳥さん?」

 古泉が電話でなにやら話をしている。

「あ、ええ…あ、報告ありがとうございます…。

 え? あ、ああ、わかりました。

 では、おめでとうございます」

 ガチャリ。

「例の件か、古泉?」

 電話を置いた古泉に、オレはハルヒにいじくられて乱れたポニーテールを結びなおす。

「ええ、先日お会いした白鳥さん、どうやら男性に戻られたようです」

「…なんだって?

 どうやって?」

「呪いのようなものらしいです」

 ハルヒの作り出した超常現象に散々付き合わされたオレでも信じられないような方法だった。

 

 

  sideA:yu-ki fukuzawa

 ♪~ ♪~

 祐巳との買い物中、俺の携帯電話がなった。

 着信先は、古泉さんだった。

「ハイ、祐麒です」

『もしもし、先日お会いした古泉です。

 今大丈夫でしょうか?』

「ええ…何かわかりました?」

『それが…一緒にお会いした、白鳥さんなんですが、男性に戻ったという情報が入ってきました』

「なんですって!?」

 素っ頓狂な声を上げてしまう。

「…そうですか…あ、でももしかして」

 ふと隣の祐巳を見ると…いや周囲中がこちらを驚いたように見ていたのであわてて声のトーンを落とす。

『ええ…お察しのとおり。

 われわれやあなたも、元に戻れる可能性が高いということです』

「…なるほど、連絡ありがとう。

 …同じ境遇の白鳥さんが戻ったのであれば…」

『ええ、そういうことです。

 あなたからの吉報、お待ちしていますよ』

 そういって古泉さんからの電話が切れる。

「電話、古泉さん?

 なんだって?」

 祐巳が間髪居れずに聞いてきた。

「こないだ会った白鳥さん、覚えてるか?」

「ええ、もちろん」

 祐巳がうなずく。

「男に、戻ったそうだ」

「えっ…じゃぁ!」

「…ああ、もしかすると、な」

 祐巳のうれしそうな顔をする。

 無論俺もうれしい…はずだったけれど、なぜか複雑な気持ちになった。

 そして、素直に喜べない俺の頭に、祐巳の言葉がよみがえった。

『アンタもしかして…このまま、女で居るほうがいいの?』

 

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