第3章 ~日常~

 

  sideA:yu-ki fukuzawa

「とりあえず…私たちが今出来ることは、あなた方お二人に今の状況のご説明をすることだけです」

「…ええ、その点については、感謝しています…」

「では、新しい情報が出来ましたら…ご連絡いたします」

 そういって古泉さんと白鳥さん、そして俺…またここから福沢祐麒に戻ります…の連絡先を交換した。

「…祐麒…まぁでも、よかったね」

 古泉さんたち四人がコッペリアの前から黒い車で、白鳥さんたちが中央線の改札の中に向かうと、祐巳が俺に話しかけてきた。

「…まぁ、今朝の絶望感はもうないな。

 ところでさ」

「?」

 不意に、ひとつ気になったことがあった。

「…俺、学校どうするんだろ?」

「…え?」

 祐巳が不思議そうな顔をする。

「…あれ?

 もしかして、花寺って…」

「…共学、でしょ?」

 予感は的中した。

「…あ、やっぱり?」

「うん…もしかして…」

「まぁ…祐麒が入る数年前から共学になったばっかりで、女の子はすごく少ないけど…」

「…そっか、それなら大丈夫だな」

「そうそう…もしかして」

 祐巳も不思議そうな顔をしていたが、ようやっと合点がいったようだ。

「ああ、俺が知ってる花寺学院高校は、男子校だった」

「…だよね…もしかしていろいろ違うのかなぁ…私が気づく気づかないにかかわらず…」

「そうかもな…」

 なんとなく安心して、クローゼットの中を確認した…見たこともない女性のセーラー服が入っている。

 …ちょっとまて。

「あのさ…俺、コレ着るの?」

「…そういうことでしょ?」

「…そっか、そうだよな…」

 妙に納得して一応着てみた。

「…うわっ…スカートってスースーするな…」

「そう?

 …あ、まぁ男の人がはくとそうみたいね

 でも…」

 祐巳は、ちょっと複雑そうに笑った。

「どうした?」

「…あ、ん~ん…ちょっと複雑だなって…」

「どうして?」

「…だって、祐麒、私よりかわいいんだもん」

「…」

 それを聞いた俺は、たぶん目の前の祐巳と同じ顔をしてるんだろうな、そう思った。

 

  sideB:ryu-shi shiratori

「…んー、これくとぉぉぉ!!!

 隆ちゃん非常にコレクトですわぁぁぁ!

 私のために、女性になっていただけるなんて…!!」

「あ、いや…別に千百合ちゃ…まぁ、そう思ってくれてもいいけど…」

 三鷹で福沢さんや古泉さんたちと別れて鳴滝荘に戻った梢ちゃんとボクがほっと一息…と思っていたら。

 廊下で梢ちゃんが転んでしまい、千百合ちゃんになってしまったのだから…。

「というわけで、マイ・ラバー♪

 これをきてくださいねっ♪」

「…そうだね、まっ、今はボクも女の子だし」

 そういって千百合ちゃんが出してきたメイド服を受け取ろうとすると、「NO! 違いますっ!」とそれを自分のほうに下げる。

 その瞬間、いやな予感がする。

 そしてそのいやな予感は当たってしまう。

「私が着させてあげますっ!

 それがコレクトっ!」

「…(やっぱりぃ…)」

「ではでは、隆ちゃ~ん、いきますよ~♪」

 …ようやく、桃乃さんや朝美ちゃん、沙夜子さんが失神していた理由がわかった、そんな夜でした。

 

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