第2話 ~連言~

 

「ふぅ…」

「あら白鳥くん、課題は順調ですか?」

「え、あぁ、銀先生…ええ、もう少しです」

 昨日の夕方、ボク…あ、白鳥隆士です…は、学校に残りパソコンで課題を片付けていました。

 昨日の課題は、パソコンでのイラストの描画。

 友人たちは自宅にパソコンがあるのでみんな帰って自分のパソコンで課題をやるといっていたし、パソコン室には人影もまばら。

「それはよかったです。

 私はそろそろ帰りますが、あまり根をつめないようにしてくださいね。

 提出はあさってですから」

「ええ…でも、もう少しですので…」

「そうですか。

 ではがんばってくださいね。

 め~るめるめるへ~ん♪」

「(もしかしてあれ、先生のテーマソングなのかなぁ)」

 そんなことを思いながら買っておいたコーヒーの栓を開けて、少しだけ息抜きをするためインターネットのブラウザを開く。

 

「…インターネット…そこで、いつもと変わったことはありませんでしたか?」

 ボクの話がインターネットの話に及ぶと、古泉さんが話しに入ってくる。

「ええと…ああ、そうそう、マクシー…あ、マクシーはご存知ですか?」

 うなずいたのは古泉さん、キョンさん、福沢(弟)さんの男性陣と、長門さん。

 梢ちゃんを含めて、女性陣のほとんどは知らないようだ。

「…先を」

「あぁ…マクシーのあるページに珍しく知らない人からの書き込みで、アドレスが書き込まれていたんです。

 面白そうだったので行ってみたんですが…」

「…そのページ、もしかしてトップに『SOS団』って文字とみょうちきりんなエンブレム、ありませんでした?」

 キョンさんが何かを思い出したように話に入ってくる。

「ええ…たしかに」

「そのエンブレム、普通に見られました? …というか、その、モザイクのようなものは?」

「モザイク? いいえ、ありませんでしたよ?」

「…やっぱりか」

 キョンさんはそういって顔をしかめた。

「そのようです…ところで、福沢さん」

「…ええ、俺も記憶にあります、そのページとエンブレム」

「えぇっ!?

 祐麒、パソコンそんなにやってたの?」

「ああ、あのパソコンはだいぶ俺が使ってるからな」

「…そっか」

 福沢(姉)さんは納得したように、座りなおし「先を続けてください」と告げる。

「…もうお分かりかもしれません、われわれはそのホームページにあった『SOS団』の関係者なのです」

 ボクと福沢(弟)さんがうなずく。

「SOS団とは、われわれ四人と、もう一人、設立の中心となった涼宮ハルヒという人物の五人で成り立っています。

 実はわれわれが考えているこの騒動の原因とは、彼女なのです」

 そこで古泉さんが言葉を切る。

「…補足するとだ。

 実は涼宮ハルヒってのは、『自分の願望をかなえることが出来る力』を持っているらしい。

 そいつが望んだから、俺と古泉を女にし、SOS団のロゴを見たあなたたちにも被害を及ぼした、そう思っているわけで」

「そういうことです…いきなり信じろ、というのが無理な話かもしれませんが…」

 その発言に、ボクと梢ちゃん、福沢さん姉弟は言葉を失いうつむいた。

「…原因は、わかりました。

 それで、対策はあるんですか?」

 しばらくその無言時間が過ぎた後、福沢(弟)さんが言葉を出した。

「祐麒?」

 福沢(姉)さんは怪訝そうに福沢(弟)さんを見る。

「…祐巳、言いたいことはわかる。

 しかし…現に俺が女になってるって、超常現象が起こってるんだ…。

 …それに…ほかに頼りようもないだろう」

「…そうね…すいません、続けてください…」

 申し訳なさそうに福沢(姉)さんが古泉さんに声をかける。

「…いえ、いきなりこんな話をして申し訳ありません。

 まぁ…あなた方以外に今のところ被害者らしい被害者は出ておりません。

 …といいますのも、お二人がご覧になったロゴが何者かによってモザイクがかけられたように見えなくなってしまったんです。

 …なので先ほどのような質問をさせていただいたわけです」

「…事情はわかりました。

 …それで…」

 古泉さんの言葉を受け、ボクが口を開く。

「…それで、ボクと福沢さん、古泉さんとキョンさんを男性に戻す、というのは出来るのでしょうか?」

「…ええ、ソコなんです問題は。

 実は…ほかの被害者の方は、行方不明になっていることが多く、それを解決すればよかったんですが…。

 われわれを含めた四人はさっぱり…」

「…」

 気まずい沈黙が、ボクらを襲った。

 

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