「綺麗な唇をください。」連歌ver.

紫田 夏来

「綺麗な唇をください。」連歌ver.

5歳だった私からママを奪ったのは

まだ赤ちゃんの直希だった


あの日から瑞希じゃなくて「お姉ちゃん」

私なんかは邪魔者になった


ぺりぺりと唇の皮膚剥き取って

ママと折り紙するのを待ってた


皮剥きを初めてした時気持ち良くて

気づけばやめられなくなっていた


14歳、中学生になった私

ネットで見かけた「皮膚むしり症」


「お姉ちゃん」宛ての手紙を残してパート

ママは私を見てなんかない


言い方が恥ずかしいけど、これ本心

「お願いだから瑞希を見てよ」


「夕飯よ」

ママに呼ばれてリビングへ

会話がうまく成り立ってない


「ねえ、ママよ。私の話も興味もってよ。私の話もちゃんと聞いてよ。」


もう限界

全ての不満をぶつけるんだ

除け者にされ続けてきたから


皮膚剥きはママは知る由もないけど

一人じゃ綺麗に治せぬものよ


私なんか直希生まれたから要らない

そんなことは百も承知よ


下の子が優先だから上の子は親の目には入らなくなる


頭では理解できても心ではわかるなんて私には無理


目頭に情緒の塊あふれ出す

堪えきれずにポロリと落ちた


家族なんか私にまるで興味ない

自室に戻り枕を濡らす


朝になりママと挨拶「おはようさん」

すると私にチラシを見せた


「お姉ちゃん、皮膚むしり症治そうね。ごめんね、何も気づいてなくて。」


弟はもう学校へ行く時間

「母ちゃん、瑞希、行ってきます!」


まだ早い。だけど学校、もう行こう。

ママが見送り「がんばれ、瑞希。」

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「綺麗な唇をください。」連歌ver. 紫田 夏来 @Natsuki_Shida

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