2日目

 翌日の午後には、不要な掲示板の洗い出し作業は、一通り完了していた。

 私は寝不足ではあったが、内海と協力して使われていない掲示板の情報を資料にまとめて、井川に渡そうとしていた。

 「井川君、これで削除作業頼む。掲示板としては、殆ど使われていないみたいだ」驚いた事にリンクの掲示板サービスは殆ど機能していなかった。

 掲示板のアクセス数も1日に10PVあれば、いい方で、殆ど0が並んでいた。この仕事は意味があるのか?と思っていたが、内海も同じ事を考えながら作業をしていたようだった。

 「昨日リンクの配信見てたんですけどね、ツバサって奴の配信が面白かったんですよ」鴨田がデスクの上を丁寧に拭き取りながら楽しそうに話した。

 「配信って確か若い子達に人気なんだろ?」

 「リーダーわかってないっすね。おじさんとかにも人気ですよ」これだと私がおじさんなのかと思ってしまう。

 「どんな配信だったんだよ?」井川が資料に目を通しながら確認した。

 「ツバサって奴がはじめての配信をしてたみたいなんだけどさ、辿々しいんだけど面白いんだよ。くだらねー話だけど興味引くっていうかさ」

 「鴨田君、そんなの見てるの?ってか配信なんて見るんだ」内海がへぇとスマホを触りながら話した。このチームのメンバーは自由だ。

 「恐らく人気出ますぜ。俺の目に狂いはないね」

 鴨田の謎の自信はどこから来るのだろうと思っていたが、私もツバサの配信を昨夜たまたま見ていた。初心者の配信者でアバターの設定もそのままに、自身の身の上話をするだけなのだが、視聴者数が急激に伸びていて、視聴者も多くリンク内ではバズっていた。そんな配信を見ていたせいか、おかげで私は寝不足だ。

 「それなら俺も見てたよ。確かに、じわじわ増えていったよな。何故増えたのかわからなかったけど」炎上配信やゲーム配信など様々なジャンルがあるのだが、雑談でリンク内で注目されるのは珍しかった。

 「リーダー見てたんですか!てか、リーダーのアバターどんなの使ってるんですか」鴨田がニヤニヤしながら確認する。

 「気にするな。お前は勉強して早く即戦力になりなさい」

 「リーダー、あんなのやらないって言ったじゃないですか。気になるなぁ」鴨田がデスクから体を乗り出した。

 「おい、うるさいなぁ。仕事しろよ」井川が不機嫌そうに呟いた。

 「なんだよ、井川。お前真面目だな。たまにサボるくらいがいいのにさ」

 「お前はサボりっぱなしだろ」やれやれと言いながらモニタを見ながら井川が言っていたが、掲示板の削除用のプログラム作っていた。小気味よくキー音が聞こえている。ソースコードを記述している彼は楽しそうだった。

 「リーダー!井川の態度が悪いですよ!ガツンと言ってくださいよ」

 「まぁまぁ2人とも仲良くね。雑談は終わりで業務に戻ろうよ」内海が毎回このような状況を解決してくれた。私よりリーダシップも、ありマネジメント能力もあるのだが、大学生のような見た目とゆるい印象からはここまで仕事ができると想像が出来なかった。

 「とりあえず今日飲みに行くか?最近飲み会とかしてないし」たまには息抜きも必要だと思い提案をしてみた。

 「おお、リーダーいいですね。もちろんリーダーの奢りですよね?」鴨田は目をキラキラさせながら私に確認した。こういう所が、可愛い部下だと思ってしまう。

 「坂枝君さすが!じゃ、お店予約するね。美味しい焼き鳥屋さんがあってそこがいいなぁ」

 「井川君も今日くらいは休もうよ」私は仕方なく奢りという事を受け入れた。

 「大丈夫ですけど、坂枝さん奢りでいいんですか?」私は大丈夫だよ、と告げ井川を誘った。彼は少し仕事に没頭しすぎてしまうところがあるので、なんとかリラックスして欲しかった。


 内海が予約した居酒屋で私たちは酒を酌み交わした。仕事の事やプライベートの事、将来の目標などを皆で語り合った。井川は自分でプログラミング言語を作る事、鴨田は自分でサービスを作る事、内海は素敵な彼氏を見つけて結婚をする事らしかった。

 ちなみにチームのみんなは独身で、鴨田が「リーダーとかどうですか!同い年だし

 」という謎の同い年だから付き合ってしまえという定義の元、内海に確認したら「ごめんなさい。もう少し頼れる人がいいなあ」と呆気なく間接的に振られてしまった。勿論私にも選ぶ権利があり、内海と付き合う気もなかったのだが。

 チームメンバーも、個性が様々で鴨田はジョッキ片手に大騒ぎ、井川に至って「坂枝さん、あの案件って納期大丈夫ですかね?」と飲みの場でも彼は仕事の事は忘れない真面目な仕事人間なのだ。内海も彼氏が出来ないとそれしか話していなかった。

 このメンバー仕事がまわるのか…と思っている事が多かったが、こうして改めて見ると坂枝チームのメンバーで仕事をしていきたいと改めて思うようになっていった。

 ただ、これから大きな力に巻き込まれることも知らずに


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