第2話 初めての食事
家に戻るとジルさんが俺達の食事を用意してくれていた。
「ジルさん、有難う」
「これが仕事さね。ただね、明日からはアンタがやるんだよ!? いいね?」
お、おれが?
そうか。しばらく動いちゃいけないってニーナが言ってたっけ。
できないことはないさ。
野営の時は自分で料理したもんだ。
うん。出来るさ。
ソニアの様子を見に行くと、レアンも一緒に寝ていたようでベッドでスヤスヤと寝ていた。
しばらく顔を見ていると、パチリと目を見開きこちらを見る。
「あうあう」
「んー? どうしたぁ? レアン?」
俺が声をかけるとソニアが起きてレアンを抱えた。何をするかと思ったら母乳をあげようとしている。
「はいはぁい。いい子ねぇ。そろそろご飯よねぇ?」
ソニアの少し大きめなおっぱいをレアンはチラッとみたらそっぽを向いた。
「えぇー? なんで? 飲もうよぉレアンー?」
顔に押し付けてグリグリしている。
なんだか恥ずかしがっているみたいに見えるが?
「なぁ、レアンは恥ずかしがってるんじゃないか?」
「そんなわけないじゃなーい。ねぇ? ほら、お願いだから飲んでよぉ。ニーナに飲ませないとダメだって言われてるんだからぁ」
そうだよな。そんな訳ないよな。
赤ん坊にそんな感情があるとは思えない。
「あれ? 飲まない?」
そこにやって来たのはニーナだ。
なにやら物珍しそうにレアンを見ている。
「何でそっぽ向いてるんだろう? 口に当ててみた?」
「んー。それがね、出したらそっぽ向いちゃって……」
「えぇー? なんでかかなぁ? ちょっと粘ってみたら?」
そう言われたソニアはツンツンと頬をつついたりして気を引こうとする。
「ねぇ? 飲んでくれないとお腹がすいちゃうよぉ?」
しばらく粘ってもこっちを向かない。
見かねたニーナが提案してきたのは。
「じゃあさ、ミルクを薄めたやつを飲ませてみよっか? それで飲んだりする子も居るからさ」
「有難う! お願い出来る?」
「ダン! こっち来て!」
呼ばれたので言われるままについて行く。
すると、台所で冷暗所からマギのミルクを出した。
マギはこの辺の土地でよく飼われている動物で、メスはミルクを出すんだ。魔物に食われないように気をつけないといけないほど弱い。
「これを、一度温めるの。やってみて?」
台所にある魔石コンロはこの世界ではメジャーだ。魔石の魔力を元に炎を出してくれる。
ツマミを捻ると火が出た。ツマミで調整する。これは魔力量を調整する役割がある。
ミルクと井戸水を鍋に入れて少し火にかけるとゴポゴポしてきた。
「止めて! そしたらカップに移してボールに入れた水にカップをあててフーフーして冷ます!」
「おっ、おぉ。フーフーフーフー」
少しすると冷めてきた気がする。
「スプーンで掬って肌に垂らしてみて?」
ポタッと垂らす。
「どう?」
「んーー。あつい」
「じゃあ、まだね」
「おう。フーフーフーフー」
これは大変だな。
でも、レアンの為だからな。
俺にも何か出来ることがあるのは嬉しい。
産む時は何も出来なかったから。
ポタッと垂らすと何も感じない。
「ん? 何も感じない……」
「それでいいわ。持って行って飲ませてみて?」
「おう」
部屋に戻るとソニアはまだ飲ませようと思って粘っていた。
「ソニア、風邪引くぜ? 一回服着ろよ。俺がこれをあげてみるから」
「えぇー!? 初めてのご飯だったのにぃ」
ふっふっふっ。初めてのご飯をあげる権利はおれが貰った。
「おぉーい。レアン? ミルク持ってきたぞぉ? 飲みたいか?」
少し様子を見ているとしぶしぶと言った感じでこちらを向いた。なんだか不機嫌そうに眉間に皺を寄せている。
レアン、もしかして言葉がわかるのか?
そんなわけないか。
口にスプーンでミルクを持っていく。
ゆっくりとスプーンから口に落としていく。
コクリと飲んだ。
レアンは目を大きく開いて息を飲んでいるようだ。
美味しかったか?
飲んだ飲んだ。よかった。
ソニアはと言うと、凄く不機嫌な顔をしていた。そんなに俺を睨むなよ。しょうがないだろう?
少しずつ飲ませると。
「あーあー!」
「ん? どうした? もっと欲しいってか?」
なんか欲しがっている気がするけど……。
「ニーナー? なんか自分でレアンが自分で飲めるようなのないか?」
「んー? じゃあ、水差しに注いで布で入口を塞ごうか。そうすると、急に出てこないから飲みやすいの」
そんな物があるのか。
すげーな。流石は子供がいるだけある。
しかも、子供を取り上げたのももう結構な数になるらしい。
「あぁ。お願いしていいか?」
「ちょっとまってて」
ニーナが何やら準備をしている。
「ニーナーごめんねぇー!」
「いいのよ。私の時も色々としてくれたじゃない? 恩返しよ。ほらっ! ダンッ! 何ボサっとしてるの!? レアン君にあげなさいよ!」
えっ? そんなに言われなきゃいけないの?
不思議に思いながら布の付いた水差しを受け取る。
「レアン? 飲めるか?」
口に近づけるとゴクゴクと凄い勢いで飲み出した。
あれ? なんか凄くない?
「ングッ……ングッ……プハッ………………ゲェェェ」
「うん! ゲップ出たわね。よしよし」
ニーナに頭を撫でられたレアンは照れくさそうだった。
レアン? なんか既に大人?
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