第15話 ゆ◯りんとか、 明◯聡美の声が聞こえるような。
その後、何やかんやが有って (面倒臭いから省略) 長男セカと次女シルにはナムの教育的指導と言う名の地獄の砂浜走りが課せられた。セカは超高速海上追いかけっこ (低空飛行訓練) での指示無視、シルは俺への構ってちゃん行為 (
例え娘であっても、いや寧ろ自らが産んだ娘だからこそ、私の男に手を出すな! となったらしい。容赦無ぇし愛されてんな~、俺。
因みにあの程度で危害を加えられる程俺も弱くは無い。最悪指先一つで金属球なんざ分解出来るし、それでもう一度作り直す手間よりもあの氷山もどきを出した方が技術的観点の面で楽しいからというガキ染みた理由だったりする。
異世界から来た漆黒のドラゴンなんていう超越種を嫁にしてる時点でお察しだろう? お互い似たモン夫婦ってこった。
「……で、何でアンタらが此処に居んだよ?」
波打ち際から少し離れた場所にある涼み小屋。俺達家族の私有地であるこの遊泳場内に存在する常設設備の中で、この小屋と言うには立派な木造建築だけは使用する時だけ現れる隠された物件となっている。
使用頻度が少ない上に常時人員を配置してまで管理する程の物では無いというナムの判断から、普段は建物ごと亜空間収納で仕舞ってあるのだ。
使う時は魔術人形の使用人が事前に展開して点検清掃の後に俺達家族が利用しているんだが……。
「まあまあ、良いじゃない細かいことは。可愛い子供達と触れ合いに来たしがない親戚の叔父さんと――」
「そのお嫁さまっす~!」
人数に応じて大きさを変えられる柔らか堕落
「失礼なー! これでも立派な子持ちだぞー!」
腕を振り上げて主張する羽衣付き水着姿のゆるふわ幼女。んでもって勝手に心を読むな。
この見た目犯罪臭のする一見幼女と白神父風な褐色丸眼鏡優男の二人組。非常に残念ながら、俺もそうだが主にナムの関係者だ。
ナムが普段カールス叔父さんと呼んでいる本名不明な褐色丸眼鏡優男。少し描写が抜けているんで追加しよう。
褐色の肌に黒金色の瞳と丸眼鏡。ナムよりは短いが印象的な薄紫の長髪に、優しげなようでよく見れば切れ味の鋭い顔立ち。
そして何より印象的な、頭に生える厳つい一対の黒金の角。
ここまで言えばもう気付くだろうが、この男はナムと同じ異世界からやって来た漆黒のドラゴン ―― あの7月7日の
カールス曰く『元の世界に飽きたから思い付きでフラッと出て行って、偶然見つけた親和性の高そうなこの地に降り立ったら現地民に見つかって騒がれちゃったんだよ』との事。
ナムと違って本来の巨大な体躯のままで降り立ったらしく、何もしていない状態でも大昔のヤツらはそりゃ上へ下への大騒ぎだったろうな。正しくは無いが今にまでその出来事が伝わってるぐらいだし。
見てくれは別にして比較的大人しい性格であるカールスはこの世界で暴れるなんて気はこれっぽっちも無かった事もあり、ナムと同じくエーテルに適応した身体へと自らを作り変えるべく
「もうカーくんに一目惚れ! その場で猛烈アタックしちゃったのー!」
だから勝手に心を読むな。先に言われたら説明し辛いだろうよ……。
「ごめーん! 続けていいよ~!」
……はぁ。このちんまい元気なのが俺達の居る世界の女神、オルタネッタだ。カールスはその旦那になる。
高位のドラゴンってのは最早神に近い存在とも言われ、実際余所の世界では龍神として神格化する場合も有るらしい。
で、カールスはオルタネッタの熱烈な求愛に対して最初はやんわり拒否したそうだ。余所からフラッと来たヤツがいきなり世界の根幹に関わるってのは、流石のカールスでもダメだろうと思ったんだと。
そしたらオルタネッタは『そんなの関係無い! だってカーくんの事好きなんだもん!』と開き直ってゴリ押ししまくったらしい。
最終的にカールスもその熱意に負けて彼女を受け入れ、世界を裏から支える補佐の立場として今に至っている。
その話を後から知ってナムに聞いてみたんだが、彼女がこの世界にやって来たのは全くの偶然で、叔父であるカールスが女神オルタネッタと一緒になっているというのも一切知らなかったらしい。
幼い頃に交流の有ったカールス叔父さんとこんな形で再会するとはね、とナムは笑って話してくれたが…… まあ俺とアイツは考えるだけ無駄なぐらいの年の差婚って事になるわな。
目の前で人目も憚らずに乳繰り合ってる幼女神と魔王みたいなナムの親戚を見てたら、んな細かいコトなんざどうでも良くなるぜ? マジで。
夫婦円満の秘訣は、考えるな、感じろってヤツだ!
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