第14話 あ、こういう描写好きなんです (長い)。

 

 

「ゴメンゴメ~ン。ちょ~っと加減が狂っちゃったぁ♪」


 浜辺の砂から生成した衝撃吸収層を無数に重ねた半透明結晶の向こうからひょっこりと犯人、もといビキニ姿のツインテール(?)娘こと次女シルが悪びれた様子も無く現れる。


「ロクス、速度重視で砂から柱を生成すんのは良いが、砕けた破片がどうなるかまでは考えて無かったろ?」


「……そうだね。ただ、そこから上書きした父さんの速さまではまだ無理かな」


「それが分かってりゃ良い。出した本数と強度、密集させた配置は上出来だ」


 腕を伸ばして俺の右隣にいる次男ロクスの肩を抱くようにポンポンと叩いてやる。普段は然程表情の変わらん顔が、心なしか嬉しそうな気もするから良しとしよう。


 ロクスのやったのはこうだ。シルが撥ね飛ばしたたま遊び用の金属球が俺達の居る一時休憩所へ向かって直撃する軌道であるのを感知した時点で、どの程度の威力であるのかを予測し、砂浜の砂から生成した透明な六角柱を七本束ねて一抱えぐらいにした柱を互いが食い込むような配置で数十本生やす。これを一瞬で終わらせた。


 砂に含まれる成分を利用して一般的に製造出来る強度のものであれば、シルの膂力が乗った金属球では難無く砕け散る程度だ。そこをロクスは練習用の作業箱に入っていた鉱石を利用して材質を強化し、衝撃吸収性に優れた六角柱形状にして更に七本で束ね、それを正面から見て柱が複雑に重なるように生やす事で互いに支え合う形にして金属球の運動力から耐え切るという意図が有ったんだろうと思う。


 ただ、この材質の欠点は想定した以上の衝撃を受けると微小な破片になって全体が砕け易いその特性にある。飛び散った破片で最悪二次被害が起こりかねん。


 練習の延長線としてある程度は見守ったが、その意図を判断した後で俺はロクスの生成した柱の一部も利用して半透明の衝撃吸収層を上書き生成。その氷砂糖の氷山みたいなモンがシルの豪速球を受け止めたって寸法だ。


 目を凝らせば衝撃吸収層の内部に六角柱が何本か杭代わりに残っているのが見える筈……曇っててあんま分からんな。


 ロクスは素材を強化する方向でやったが、俺は極力破片を出さずに衝撃を吸収する構造に拘ってみた。


 見た目が氷砂糖みたいなのは、空気を含んだ極小の部屋のような構造体が無数に並んでいるから。ソイツらはある程度の応力を受けると隣接する構造体へ力を伝えながら部屋ごと折り畳まれるようにパタパタと圧縮されていく。


 その間にある空気は仕切られた空間自体が極小な所為で外部へは簡単に逃げられないモンだから、構造体が崩壊し切れずに次々と衝撃を緩和しつつやんわりと隣の部屋へと応力が伝播され続けるのだ。


 目の詰まったどデカいブレドパンを押し潰そうとする感じを想像してもらえると簡単かもな。多少凹みはするが、適度な弾力でもってある程度は押し返される。ソイツが衝撃でズレて移動してしまわないように太めな串でぶっ刺して固定してあるってワケだ。


 外的要因切っ掛けとは言え、ロクスとのちょっとした親子交流コミュニケーションが出来たのは僥倖だろう。


 まあ、ワザと放ったらかした所為でぶーたれてる次女シルコイツをやらかしたのは褒められたモンじゃねぇけどな。


 末弟の相手ばかりしてる俺の気を引きたいってのが明白な動きを見せてたんで、これは親からのちょいとした罰だ。


 ……あ~あ、こんだけ派手にやりゃあ向こうにも届くだろうに。知らねぇぞ俺は。


「シル~、リトスに何をしちゃってるのかな~♪」


「ひょえっ?!!! ま、ママっ!? コレは――」


 一切気配を感じない状態で耳元からあの声がすりゃあ、俺なら即刻死を覚悟するね。ああなったナムは止められんぞ……。


「これは結構お昼が遅れそうだね、父さん。 ……イサナ、料理の進捗って調整出来る?」


あるじ様の指示あらば如何様にも。別働隊には速やかに共有されます」


「そう。 ……父さん、どうする?」



 ……やっぱお前、何処ぞで参謀とかやってたろ? イサナが軍幹部に見えて来ちまったわ、俺。

 

 

 

 

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