第11話 ホホイのホ~イでもうイッパイ。

 

 

 砂浜の後方、日除けの天幕と敷物のある一時休憩所。


 適度な潮風が暑さを和らげる中、俺は三歳の次男ロクスと共に日陰の空間でとある練習をしていた。


 左のゴツい作業箱に入った様々な鉱石の岩塊から不要な部分を取り除いて精錬し、加工前の地金にして右の作業箱に入れていく。これを流れ作業も同然な速さで処理するのだ。


 今の俺だと地中から取り出す時点で混じり気の一切無い状態まで持って行けるんで、暫く鉱石の状態で見ていないな。


 この鉱石達はナムがロクスの練習用にと、人間ヒュマが簡単には入り込めない程の秘境とも言える山地まで自分で飛んでいって、雑に切り出して適当に砕いたモンだ。


 俺に言わせりゃ含有率が低過ぎる屑石も入っていてやり難い事この上ないシロモノだが、ロクスは姉達の様子を眺めながら積み木遊びでもするかのような簡単さでホイホイと片付けていく。



 ちなみに今迄の話に挙がって来なかった三つ子の末っ子である次女シル (十歳) は、だだっ広い砂浜に引かれた四角い領域を二つ並べて長方形にした試合場内で行われるたま遊びをやっている。


 こいつは人間ヒュマの頭部ぐらいはある滑り止め模様が施された俺特製の金属球一つを、二手に別れた陣営で相手の陣地に居る誰かに向かって投げ付け、それを受け止められれば再び相手陣地側へ投げ返し、受け切れなかったり不意を突かれて球を当てられた場合は相手陣地の外周に設けられた攻撃枠へ移動、相手陣営に避けられたり自陣地内の仲間から渡す目的等で飛んで来た球を受けて相手をを使って攻撃、そうやって相手陣地内の人数を減らして行って先に全滅させた方の勝ち、というモンだ。


 当然この遊びにはある程度の数が必要だから、シル以外のヤツらには普段手伝いの名目で雇っている事にしてある人型ヒトガタの魔術人形達をズラッと揃えて使っている。


 普通の人間ヒュマだと持てすらしないような重い金属球に敢えてしてあるのは、シルの投げる球の速度が速過ぎて布や皮程度の中空素材ではとてもじゃないが耐え切れないから、という至極単純な理由だな。


 その点、ナムの作り出した魔術人形ならばシルの強烈な球速にも反応出来るし、ある程度は豪速な球の直撃にも耐えられるような対策を施してもある。


 無論シルには魔術人形だからと言って無闇に壊すようなマネはするなとナムが厳命していたが。要は意図的な手加減を学べ、という彼女なりの教育なんではなかろうか。


 そいつの裏付け代わりに、あの魔術人形達には周囲の状況を常に把握し場合によっては遠隔でナムに直接知らせる機能も付いている。


 例え破壊されようとも、その詳細を可能な限り本体の記憶核に記憶し続ける仕組みがあり、種粒ぐらいしか無いソイツが無事ならナムか俺が情報を見られる、という寸法だ。



 何で門外漢の俺がそんな事を知ってるのかと言えば、その記憶核全てを要求仕様に合わせて生成したのが他ならぬ俺だからだな。


 必要十分な記憶容量を持たせつつ極限まで小さく頑丈に――ナムの吐き出す紫黒炎の直撃を最低は耐え切れと言われた時にゃあ、思わずその場でアイツを押し倒してウヤムヤにしてやろうかと一瞬思ったさ。


 結局上手い事乗せられて試行錯誤の末に完成した記憶核を特製の実験器具にブチ込んで、ナムの紫黒炎を吹き入れ密封。


 渦巻く破壊の炎が収まった一週間後に器具から無傷で取り出せた時の喜び様と言ったらそりゃあもう………次男ロクスが出来ちまうぐらいの勢いだったワケで。



 ……そう、予定外の事態が起こったっていう直接の原因が、実は記憶核ソレ絡みなんだわ。

 

 

 

 

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