第8話 クワバラ×クワバラ (そこそこ時は流れる)。
半ばヤケクソ気味に盛り上がったのが功を奏したか、その後ナムは見事に身籠り、参謀めいた落ち着きのある長女ファスと頭を使う前に本能で動く系な長男セカ、甘えたがりと見せかけて計算高く他人を操る次女シルの三つ子を出産。更に二年後には瓜二つだが戦闘スタイルの異なる双子の姉妹 (三女フォウと四女フィフ) が、その五年後に予定外の事態が起こった結果次男のロクスが生まれた。
まあその前に、7月7日の
マローナ曰く『こんなモンぐらい防ぎそうな
結局、ナムとマローナは母親同士だからか仲良くなって子供達の面倒も見てくれるまでになった。どうやら兄として慕っていた俺を誑かしたと勘違いしたマローナが、いきなり現れた泥棒トカゲことナムを見て反射的に体が動いたとか何とか。女って怖ぇ。
後は俺の『取り敢えず全部吐き出せ』という言葉通りに、元居た世界から追い出される羽目になった理由を事後のまったりとしている時間にざっくりと教えられた。
ナムが言うには、女神のダンナである主神が相当な好色で、高位のドラゴンである彼女にも手を出そうとした事が当の女神にバレて、嫉妬に狂った女神に存在を消されそうになったかららしい。単なる八つ当たりじゃねぇかよ。
ちなみにナムはその主神に対しては『私の方にその気が有ったかって? 有り得ないね。だってアイツ、
元の世界で一方的に嫌われていたという話は、漆黒のドラゴンという見た目と滅多に姿を現さないという情報の少なさから、不気味だとか不幸を齎す厄災なんじゃないかという勝手な憶測がさも真実かのように定着してしまったからなのだという。
種としては少数派でドラゴン全体としても然程の影響力を持たず、己の欲望に忠実で周囲の評価や評判を全く気にしない性分らしく、何だか知らんが嫌われてるらしいぞ→じゃあ面倒だから隠れて生きるか、みたいなノリでひっそりと暮らしている個体が多かったらしい。
ナム自身は魔術を用いた技術開発とその応用を通じて世界の真理を探求するという、一聴するとそれがどう真理に繋がるんだかよく分からん研究を生き甲斐としており (只の知りたがりだよとアイツはよく言っている)、その副産物とも言える独自の魔道具や術式を気紛れに生み出しては時折有翼族という亜人種の姿に擬態し、お手軽かつ利便性の高い魔道具の権利を信用の置ける商会に売りつけ、莫大な売上の割には僅かな取り分を研究の足しにしていたとの事。
勝手に勘違いして嫌っている筈の存在から知らずの内に多大なる恩恵を受けているという状況は、時折外から覗くだけの私からすれば妙に滑稽だったねと特に感慨も無さそうに語るナムを見て、俺のとある部分がキュッと縮み上がったのを今更思い出したわ。
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