第7話 長~~~~~~いおつき合い。唐突ですけど。

 

 

「生まれてからロクな人生歩んじゃいないが、勘は良いんだ。――無理してんだったら、取り敢えず全部吐き出せ。俺なんかで良いんだったらずっと隣に居るぐらいは出来る。金は無くても暇だけは腐る程あるからな」


「……言ったね? ドラゴンってのは案外執念深いんだ。一度結んだ誓いを反故にするのは、その一族を全て敵に回すに値する愚行となる。キミにその覚悟はあるのかい?」


 どうせ乗せられた船なら最低限の格好カッコ付けぐらいは……と柄にも無い事を言ったら、逆に追い込まれたんだが。どうしてこうなった。


「覚悟もクソも……正直無いな。俺にとっちゃ、お前に出くわしてから体感で1アワも経ってねえんだぞ?」


 しかも初手は不気味な喋る黒岩、次にお出ましたのが厳つい漆黒のドラゴンと来やがる。まさか中身がコレだなんざ思わんっつうの。本人 (本ドラゴン?) には口が裂けても言えんが……。


「情けないなぁキミは。男としてならサイテーだね」


「うるせぇ。んな度胸も無ぇから嫁が来なかったんだよ!」


「ハハッ、キミらしいや。……心配せずとも、私はキミから決して離れたりなんかしてやらないよ。寧ろこっちから確保しに行ったぐらいだからね。私がキミの頭の中に干渉して現地の言葉や記憶を探ったアレは、下手をすると魔素がエーテルの働きを狂わせて最悪使にならなくなる可能性があったんだ。別にそこでダメになった所で、他にもやって来るだろう現地人おかわりで改めて試せばいいやぐらいにしか思って居なかったからね。要はキミの事なんて最初はどうでも良かったワケだ。だけどもキミは、そんな私のお座成りな探査サーチにもあっさりと耐える許容量の高さを見せたどころか、素の状態でも最適化後の私と即座に子を為せる程の親和性を持っていたんだ。決め手は互いが本来持っている属性――私が大地全般で、キミが石、特に鉱物系に関する特化属性というものだね。さしずめ私は何人をも寄せ付けぬ試される大地で、キミはその中でもとびきりに煌めきその地へ多大なる価値を齎す宝石なのさ」


 嬉々としてトンデモな事実をさらっと言いやがって……。偶々やられたのが俺だったから良かったらしいが。ここは周辺の奴らに被害が無かった事を喜ぶべきなんだろうな。


 ただ、面倒な存在に運悪く目を付けられちまったと嘆く気には不思議となれない。


 既に俺の身体には何らかの事がされているらしいが、それとは関係無しに本能がザワつくというか……。


「そんな大層なモンであるかは知らんし、そもそもお前の言う事をハナから信じられる程真っ直ぐな性格じゃあない。ただ……」


「ただ? 何だい?」


 余裕綽々、傲岸不遜、奇想天外、唯一無二。何処から出てくるのかは不明な言葉がわらわらと湧いて来やがる。


 そいつらを隅に押しやって、間近に居るナムの顔を更に引き寄せて。


「お前の好きなようにされっぱなしなのも癪なんだよ。さっきからどうしようも無く昂ぶってんのは、誰の所為だと思ってんだ?」


「それは光栄だね。キミこそ、覚悟しなよ?」





 その後どれぐらい経ったのかは覚えちゃいないが、飽きるという言葉がこの世の辞書から消える勢いでひたすらに頑張った。


 以前までなら到底あり得んような無限とも思える持続力に、俺は普通では無いになっちまったんだと、そんなしょうもない事で嫌でも自覚させられたのだった……。

 

 

 

 

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