第4話 こういう時は、大体どっちかが話を勝手に進めがち。

 

 

 俺から見えるコイツは、どデカくて喋る不気味な黒岩だ。これが本体なのかも不明だが、先程まで周囲を覆っていた尋常では無いエーテルの密度からして、少なくとも厄災級の化け物ぐらいじゃねぇと説明が付かんだろう。


『う~ん、ヒトからすれば化け物ではあるし、生きてるって定義を何処に求めるのかにもよるよね。私って基本寿命が有って無いようなモンだからさ』


 ……勝手に心を読むなよ。どうせ俺の記憶から情報を得てんだろうから、此処の説明はしなくていいな?


『うん、同期を取ったから大丈夫だね。キミの名前はリトス・スキモス。ヤマーリ歴364年5月13日生まれ、現在33歳。父はナマス・スキモス、母は――』


 そこは言わんでいいだろ。合ってるから。 ……で、お前は何だ? 万が一伝承にある厄災だとしたら、何の為に来たんだ?


『敢えて言うなら生きる為、かな? ほら、私って元の世界じゃ大層嫌われてたじゃない? 変な影響を与え過ぎるからってカミサマって奴に存在を消されそうになったもんで、ついプチっとなって私の寝床ごと痕跡を消し飛ばして、その世界から出て来ちゃったワケ★彡』


 物騒だなオイ……。まさか邪神とかじゃ無いだろうな?


『だとしたら、キミはどうするの?』


 どうもこうも、俺なんざが大して何も出来んだろうよ。煮るなり焼くなり好きにしてくれや。所詮その程度の人生だったと諦めるさ。


『達観してるというか、ヤケっぱちというか……。うん、イイね。私キミの事、気に入っちゃった!』


 どうやら俺は、何か知らんがコイツのお眼鏡に適っちまったらしい。


 それまで岩石の表面を鈍く輝いていた暗紫光が一際強くなったと思えば、唐突に内側から切り裂かれたかの如く真っ二つに分割する。


「あぁ……。そりゃあ、昔のヤツは厄災だって表現するわな」


 中から出てきたのは……漆黒の体表と濃密な紫黒のエーテルを纏わせる、全高二メル程のドラゴンだった。


 幼体ってワケじゃない。完全なる成体の姿をしたドラゴンだ。


『失礼だな~。その昔々の厄災サンってのが同族かどうかなんて判らないじゃない。それに………こうやって出てきちゃったら、キミに受け入れて貰えなきゃ私、存在を維持できなくなっちゃうんだよねぇ?』


 その視線を感じた時点で、完全に獲物として囚われてしまったかのように俺は一切動けなくなる。


 圧倒的な威圧感。有無を言わせぬ重圧の中。まるで弄ぶかのようにゆっくりと近づいてくるその姿を見て。何故だか俺は――



 どうしようもなく、美しいと思えてしまったんだ。

 

 

 

 

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