第3話 謎の存在は (時々) 嘘付かない。
「これ以上近づくと危険だな……」
多少の高エーテル濃度なら平然と動くように回路が保護されちゃいるが、あの異様な密度は漏れてくる分だけでも異常を引き起こすかも知れん。
仕方無くトラックから降り、落ちた衝撃で出来たであろう巨大な窪みに向かって目測数百メルぐらいの距離を歩いて近づく事にする。
今更ながら、やっぱり止めときゃ良かったか。俺自身は術士って程では無いにせよ多少は術を使える。そんなシロウトに毛が生えたような奴でも
それでも、俺の足は止まらず歩き続けている。何故だかは知らんがそうしなければいけないような、そんな強迫観念にも似た感情が俺を突き動かそうとしてくるんだよ。
そうやって何ミニツか経ち、いよいよ距離も二、三十メルぐらいにまで近づいた頃、窪みの中心にある紫黒色の繭玉に変化が起こった。
濃密な紫黒のエーテルがまるで探るように外の大気へと混ざり合うような動きを見せると、その後一瞬でエーテルが吸い込まれ、ようやく本体が姿を現しやがったんだ。
それは、血脈のように禍々しく波打つ暗紫光を纏わせた、真っ黒で巨大な球形の岩石だった。直径は余裕で三メル以上はありやがる。
少し離れた場所からでも漂う焼け付いたような匂い。状況から考えて、こいつが空から降ってきたと考えるのが自然だ。
「よりにもよって、
大昔の伝承なんざこれっぽっちも信じちゃいないが、流石に時期がドンピシャ過ぎんだろう。ンなもん内容を知ってりゃ誰だって厄災を――
『※※、※※※※※※※※、※※※? (ねえ、私の喋ってる言葉、分かる?)』
「うおっ、何だ?!」
何か直接、自分の中に聞こえたぞ! 念話か!?
『※※、※※※※※※。 ……※※※※※※※、※※※※♪ (あ~、やっぱ無理か。 ……ちょっと頭ん中、借りるね♪)』
そいつが再び理解不能な何かを発した直後、長縄のように細い紫黒のエーテルが数十メルの距離を無視する速さで俺の頭に突き刺さる。
『※※※、※※※※※※※※※※※※※※※※※! (大丈夫、ちょ~っと気持ち悪くなるだけだから!)』
何か言ってるが全く分からんし気持悪ぃ!!! 頭が恐ろしくエグい二日酔いの状態で揺さぶられてるかのような酷さだ。
おいおいおい、生まれてから今までの様子が流れて行ってんのは何だ!? コイツ、俺の記憶勝手に漁ってんだろ!
『………………あ、あ~。 ……本日はお日柄もよく、ベヒモスはまた美味なり。 ……うん、我ながら完璧!』
暫くすると、再び自分の中に直接言葉が入ってきた。今度は何を言ってるかハッキリしたが……。
「……お前、何者だ? そもそも生きてんのか?」
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