第2話 そうだね、ト◯タだね (元ネタの話です)。
自分みたいなのが言っても疑わしい話だが、真っ当じゃねぇ生き方はしてても人の道から外れるような事をした覚えは無い。あんなガラクタの寄せ集めみたいな場所に一体、何の価値がある?
そんな、あり得んような仮定で思考を埋めつつトラックを走らせる。こいつは軍用にも使われるヤツの型落ちで、元から使い倒されてボロかったがその分安くて頑丈で長持ちする。
エーテルの消費効率? ンなもんは知らん。とにかく過酷な環境で止まらない、最悪壊れても適当な応急処置で取り敢えず走るってのが信条だ。戦場から生きて帰って来れなきゃ意味無ぇかんな。
確かどっかの軍が格納庫に見立てた建物を爆撃して瓦礫に埋もれてたやつを引きずり出し、走れる所まで直せるかって実験をやってたが、駆動系と衝撃緩和機構の歪んだ取り付け部分をぶっ叩き、無理矢理戻した上でひん曲がった扉をこじ開けて起動させたらしれっと走っちまったらしい。
その実験が良くも悪くも宣伝になったか、正規軍の輸送車両から非合法組織の武装改造車まで、ありとあらゆる場所で見かける定番中のド定番車種だ。
どこにでもあるってのは便利なもんで、交換用の部品がどこに行っても手に入る。売り出している商会の正規品から怪しげなニセモノ、一部の愛好者がこぞって求める他商会の強化品なんてのもある。
俺のボロトラック用の部品は当然、義弟の加工屋マーボウ謹製の改良品。正規品を元に強化や改善を施して素材から作り直した独自部品になる。大元の商会に訴えられると困るから、今ん所は俺専用としてこそっと使っているだけだがな。
これらは正規品と互換性を持たせてあるから、出先で緊急的に部品を手に入れて交換も可能。当然、その分だけ性能は落ちるが問題無く動くし尚且つ自走で帰ってこられるって寸法だ。
……分かってる。今言うべきはこんな事じゃないってのはな。
出来ることならモメント・ウフの街や国の役人に丸投げしたい。報告さえしてりゃあ特に何も言われないだろうさ。
謎の落下地点へ近づくにつれてビンビン感じるヤバい気配。理屈抜きで分かる、というかアイツに分からされるっつうか。
アレは軍の兵器とかそんな生ぬるいもんとは違う。段々と晴れてくる土煙を押し退けるように濃密な紫黒の煙が、その何かを包むように丸くその場へと留まっている。
瘴気とは違う。恐らくエーテルの雲だが、紫黒なんて色は見たことも聞いたことも無え。どう考えても異質だろ、ありゃあ……。
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