涙「自責」
過去には忘れた出来事が多数ある。
僕の場合は、その多くが中学の時代にある。
授業中で先生に叱られ笑われたこと
友達と喧嘩してしまったこと
まぁ、今の僕から言わせれば中学、高校のときは涙脆かったというか感情のコントロールが出来ていない幼い状態だった。
特に、中学三年になり生徒会長となった時期は本当に忘れたい地獄の時間だった。
二年のときに伝えられていたよりも、大変な仕事の量で文武両道と教えられ教育されてきた自分にとって勉学の時間を割いてでもやらなければならないことが多かった。
睡眠は十分にとらなければ、授業は受けれず睡眠をとれば時間がなくなる。
当時は、責任と仕事をどうしてもやらねばと無茶をしていたものだ。
中学で、深夜を何度体験して生徒会の仕事をしたのだろうか。
当時は本当につらかった。
親は、僕の進路に何も言わず応援してくれたがその代わり学校についてはほとんど無関心だった。
冷たいわけではない、感情を持ち込んではいけないと知っていたのだ。
だが、当時の僕は少しでも慰めてほしかったのだろう。
それは、当時生徒会長の間に書いたノートを見ればすぐわかるだろう。
学校における失敗をまとめたメモ帳のようなもの。
学校では学年順位は三位以内のキープしながら、生徒会長としても活動していた。他の生徒会員が嫌がることを率先して行うのも仕事の一つだと考えて多くの人を手伝いもした。
だが、このメモ帳には「それが失敗」だったとハッキリと書かれている。
何を考えていたかは分からないが、テストの点数の推移を見てみるとその理由が分かった気がする。
本来、学校側が想定していた生徒会の仕事の七割を一人が受け持っていたのだ。それが、優秀な生徒であってもどこかで限界は来る。
そう、僕の場合それは点数に出た。
460以上を安定して出していた二年から一転し、三年では440→423→398→402と点数の減少が目に見えた。
順位も二桁になることもあり、相当に苦しいことをしていたのだと認識させられた。
所詮はただの人で、天才ではない。努力が減れば結果も減る。当たり前のことだった。
「もう、だめかもしれない」
メモ帳に書かれたその言葉少し滲んでいて涙が当たったのが分かった。
そういえば、この日は人生の中で最も大きな失敗と言っても差し支えないことが起きた日。
生徒会の最後の大仕事、後期生徒会の任命式。
生徒会長の言葉、つまりは僕の生徒会長としての最後の言葉。
このときの僕は、すでに精神的な余裕はなくいち早く生徒会長という枷から外れたかった。
それを急いだ結果、僕は口から"
そして、頭は真っ白になった。
言おうと思っていた言葉は遥か彼方で飛び跡形もなく消えた。
飾ることのできなくなった言葉は、何より顔に出た。
会長?と、司会を担当していた生徒会員に、心配そうに見られたことは滑稽だろう。
顔は歪み、何かがこみあげてくるのを感じていたのだ。
「生徒会長の――」
喉はそこで詰まり、何もかもが嫌になった。
「止めたい」
その一言だけが、マイク越しに先生、生徒へと伝わり場は騒然とした。
「僕は、生徒会長として今まで多くの仕事をこなしてきました」
勢いは止めるべきではない、心で自らを責めながらも止めることはもうできない。したくない。
言ってやると、そう思って言葉を連ねた。
もちろん、その日。先生には叱られた。
フラフラな脚で帰る家は、無関心な親のいるところ。
確か、あんなことがあったんだな。
そして、このままメモ帳を広げて...
静かにメモ帳を開くと涙を溢れさせながらすべての失敗を書き始めたんだったな。
―――自分を責めるのはやめたほうが良い。
知っていたのに、結局はそれを止めることは出来なかった。そして、それを責める。
自分でも嫌なことだ、忘れたいことだ。
それでも、このメモ帳を見ると思い出さずにはいられない出来事の一つ。
あの日の涙は、自責の涙。
自らに対して、思いを連ねた涙。
なんの感情なのか理解したくない、自責の涙だった。
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