11 追放されたポーター、宿屋「希望の小鳥亭」での初仕事 その4

主人公:ヒロ  …運搬者ポーター。念願の運搬者ポーターギルドに所属する

宿 屋:ケント …ダスティーの宿屋「希望の小鳥亭」の主人。厨房で料理人をしている

探索者:ブロンゴ…同探索者のリーダー。妻帯者の30代。その腕前は凄いらしい

 関連:セッチュ…アインの先輩。彼女が同探索者に居るらしい

   :トルン …同上。妹が同探索者に居るらしい

   :アイン …探索者「その日の糧を探す者」の一員…所謂下っ端新人

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- 遠征1日目 その2 -


「…っ!?」


奥に居たゴブリンシャーマンが杖を掲げ、今まさに炎の魔法を発動させようとしている所であった。


だが…4人はゴブリンたちと戦っていてそれに気付いてない…


「ヤバイっ!!」


俺は…ドアを引き開け…叫ぶ!


「みんな!魔法の攻撃が来るぞっ!!」


…と。そして各々に土壁アースウォールを張るにしても4つも構築するには時間が足りないし魔力もギリギリでぶっ倒れかねない。


(くそっ…間に合え!!)


俺は、味方ではなく…ゴブリンシャーマンに向けて土壁を…それも杖を巻き添えにして!


〈ゴブッ!?〉


ぱぁんっ…かんっ…ころころころ…


土壁を杖にぶち当ててその手から弾き飛ばす。おまけに1枚板をぐるりと巻いて円柱状にすることにより、ゴブリンシャーマンを孤立させ、且つ、杖と泣き別れにすることに成功する!


「はぁ…つ、疲れた…」


まだゴブリンどもは殲滅されていない。


「ヒロさん!」


アインが叫ぶ。


「あぁ、ゴブリンキングか…」


魔法を使わない腕力自慢なら問題は無い。ウルフ系よりも足が遅く、斧を振りかぶる速度だって遅い。


「よ…っと」


剣を抜き部分的に身体強化フィジカルブーストを掛ける。筋力と敏捷力だ。そして…


〈ぐがっ!?〉


斧を上段に振り上げた時点で軽くジャンプして首を狙って水平に振り抜く。


とっ


降り立ってすぐに避ける。


少ししてからゴブリン・キングは両腕と首がずれ落ちて血飛沫が上がる…


「うわっとっとっ!?」


慌てて血飛沫から逃れるヒロ。最後が締まらなかったが…


「おいおい…嘘だろ?」


「ゴブリン・キングを一撃で?」


「…本当にポーターなのか?…あいつ…」


と、アインを除く面々が手前のゴブリンを斃してからこちらを見て呟いている。


「残るはシャーマンですよ!」


「「「わかっとるわい!」」」


こちらをみて動かないので突っ込むと3人同時に返して来たw


「まぁ…あの中に居て動けないから水攻めで簡単なんだけどな?」


と、水生成ウォーターでシャーマンの背丈くらいまで満たすと同時に土柱の天井を塞ぐ。


〈ゴブゥ~!…ごぶぶぶぶ…〉


何か籠った声が聞こえてきたが杖を持たない魔法を発動できないゴブリン・シャーマンなぞ唯のゴブリンと大差は無い。



数分後、土柱に耳を当てて聴いてみるがまだ暴れてる音が聞こえたので更に放置する。


10数分後、土柱に耳を当てて聴いてみるがまだ弱々しいが暴れてる音が聞こえたので更に放置する。


1時間後、土柱に耳を当てて聴いてみると静かだが死んだ振りをしてる可能性があるので放置する。


2時間後…


「なぁ、もういいんじゃないか?」


との、ブロンゴの提案に俺は一応頷き…中の水を凍らせた。


そして土柱を解除。


ぱぁん…ぼろぼろ…がしゃん!


凍結した土柱の中身が転がり出てきた。


その中で、壮絶な死相をしたゴブリン・シャーマンが死んでいた。


「?…普通、ダンジョン産の魔物って死んだら消失するよな?」


「消えてませんね…」


傍に転がっていた杖も消えずに残っていた。無論、殺されたゴブリン・キングもそのままだった。とはいえ、ゴブリンたちは死んだ途端に消失していたが…


「はぐれ、なのかもな…」


「渡り、ですか?」


「ああ…」


(ハグレとかワタリって何だろう?)


そんなことを想いつつ、ヒロはドロップ品や死体を回収して回っていた。


一応、証拠として持って行くんだそうで…普通はダンジョンの魔物たちはその場で焼失するので討伐部位の切り取りは無理らしい。


だから魔石、或いは稀にドロップするドロップ品を討伐の証拠として持って行き、買い取って貰うそうだ。


ま、そんな訳で洞穴どうけつに入ってすぐの奥の広場での死闘は終わり…今日は洞穴の掃除をして終えた。


いや…単に可燃物を壊して火をつけただけだが…またゴブリンどもに再利用できないように徹底的に破壊して焼いたって訳。



「はぁ…引き揚げるぞ?」


「はい…」


「捕らわれた人は居なくて良かったな…」


「まぁ、奥は別だがな…ちゃんと手を合わせといたか?」


無言で頷くヒロ。


お墓を作らなくていいのかと思ったが、余りにも多くの…数えきれない骨を見て断念した。


せめて、雑な火葬ではあるが…ダンジョン…いや、洞穴の外で手を合わせて念じることで許して貰おう。


(仇は取った。安心して成仏して欲しい)


…と。


ふと、頬や肩を、頭を触れた気がした。


そして慌てて目を開けると…光が立ち上って行くような…あれは…


「どした?…行くぞ、ヒロ」


「あ、いえ、はい…」


ちらり…と入り口を塞がれた洞穴とその上の空を見上げたヒロは…そのまま振りからずに去ったのだった…


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浅い洞穴でちょろっと調査に入っただけなのに思ったより深い案件だった模様…

冒険者ギルドに戻って調査結果を報告したら近辺調査の大々的な緊急依頼が発布されたようで…

※ヒロにも依頼が来るかは不明w

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