10 追放されたポーター、宿屋「希望の小鳥亭」での初仕事 その3
主人公:ヒロ …
宿 屋:ケント …ダスティーの宿屋「希望の小鳥亭」の主人。厨房で料理人をしている
探索者:ブロンゴ…同探索者のリーダー。妻帯者の30代。その腕前は凄いらしい
関連:セッチュ…アインの先輩。彼女が同探索者に居るらしい
:トルン …同上。妹が同探索者に居るらしい
:アイン …探索者「その日の糧を探す者」の一員…所謂
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- 遠征1日目 その1 -
「遠征って
「あぁ…近場の
大体数時間で行き来できるのでとんぼ返りなら1日も掛からず半日で済むが、中に入っての探索も入れれば1日、或いはそれ以上は掛かるって話しらしい。
「成程…荷が無ければ1日で帰って来れるかも知れないと?」
「おう。お前のその
バシバシと肩を叩くブロンゴだが、痛いので止めて頂きたい…
「リーダー、素人も同然の
アインが辛辣な突っ込みをしてくれたお陰で、俺の肩はちょっと痛いだけで済んだ。
「あ~…ありがとな、アイン」
「いえ、ナップザックは無理とわかってますが、その中の布袋のことを考えて貰えると助かるのですが?」
と、まだ諦めてないようだ…まぁ場合に依っては1つくらいはいいかも知れんが…一般的に見ても1つ辺り、金貨50枚前後の価値があるって代物をそう易々とはなぁ…
(一気に4つもこさえたもんだから昨夜は眠くてたまらんかったし…)
「まぁ…別れるまでに恩に感じることがあれば1つくらいは譲ってもいいけどな…」
と、アインだけにそう答えておく。実際、
こんな代物を多少の犠牲(魔力とか素材とか)で創れる俺の存在の口封じには、1つくらいは譲る必要があるかな…と考えている(一応、魔力が固定されるようにとかなりの魔力を消費したしな)…あ、口封じだと変な表現か。要は、「黙っててね?」ってことだ。
・
・
「おお…荷を背負ってないとこんなにも早く移動できるのだな…」
鍛えられた冒険者だ。普段背負ってない荷物が無ければ移動も楽だろう…
(俺はきつかったがな…はぁ)
問答無用な歩きについていけなかったので、普通に休憩を取らせて貰ったんだよ…悪いか?
前のパーティじゃ戦闘の役に立たないからと後方で待機が多かったんでな…全然レベルは上がらなくて連中の後を付いて行くのにも苦労したわ…何とか体力回復の水薬を高い金払って教えて貰ったりな…
(間違えて体力回復じゃなくて怪我を治す回復薬作ったりしたっけ…まぁあれは怪我の功名だったが)
まさか、水薬の濃度の違いが
今回、洞穴に行くと聞いて、その外や中で素材が集められるかも知れないと…まぁ余裕があったらだけど。一応ブロンゴさんにお願いしてみたんだが…
「あぁ、そりゃ俺らも採取するからな。採取場に着いたら教えるから代わりに集めておいてくれるか?」
…だと。いや、いいんだけど。まぁ…魔物の見張りをしてくれるってんで安心して採取はできるからいいか…俺の場合、ほぼ一瞬で回収しちまうんだけどな?(苦笑)
「あ、あそこだ…流石に入り口に見張りが居る…って感じではないか」
見れば、それらしい雰囲気の洞穴の入り口がある。
「この周辺には素材の採取場とかありますか?」
「いや、わからん」
「…えと」
しょうがないなと周辺を探知すると…
「あ~…確かに大した物はなさそうですね」
と答えると…
「「「えっ!?」」」
…と驚かれた。
「…はい?」
「ひょっとして…サーチできるのか?」
サーチは探査といって敵意のある存在を探し出すスキルだ。ちなみに使ったのは探知で周辺に気配があるか調べるスキルだ。サーチは悪意どころか地形すら把握できる…一般的にはスキルと認識されてるが俺の使ったのは生活魔法のそれだ。魔法なのでスキルと違い、行使前に色々と設定すれば色々なモノが見えてくるんでスキルよりは使い勝手はいいんだが…
(多分スキルと思って訊いて来てるんだろうな…)
「いや、生活魔法の探知ですよ。一応探そうと思ってるのがあるかどうか?…ってのが何となくわかるってだけで…」
「「「なぁんだ…」」」
そう答えたら、速攻でがっかりされた。ひょっとして斥候みたいな使い方ができるかもとか思われたか?
(まぁ…俺ポーターだし…斥候なんてできないからいっか…)
という訳で、洞穴に入っていく一行…一応、ブロンゴ・セッチュ・俺・トルン・アインの順番だ。いや、洞穴が思ったより狭くて2列は無理だからだそうだ…一応、武器を振り回せる程度の幅はあるが、2列で移動は無理ってことだ。
「あ、ランプも
「「「…え?」」」
「
ぽぉ…
一応、ブロンゴさんの頭上と俺の頭上、そしてアインの頭上に明かりを灯す…余り近いと頭が焦げるので足元が少々明るく見える程度の距離を取って浮かせる。
(天井が高くて良かったが…まぁ水ぶっかけられても消えないし大丈夫か)
ザッザッザッ…
暫く進むと少し開けた空間に出る。
「ここら辺には
「あ、はい…」
といいつつ水筒を取り出して配る。中身が冷水なので皆美味しそうに飲んでいるが…採取するのは俺だけらしい…いや、いいんだけどさ。
「じゃあ採取してきます」
「おお、頑張れよ?」
…誰1人として護衛してくれないのかよ?…と思いつつ、とりま探知して何処に何があるか把握に努める。
(…探知)
ぽぉ…っと視界を色分けされて見えるようになる。
(緑色が薬草。青色が魔力草っと…この紫色は毒草か?…赤色は何だろうな…)
一応色毎に1つづつ収納して何なのか確認する。結果、以下のように判明するのだった。
◎緑色…薬草
◎青色…魔力草
◎紫色…毒草
◎赤色…強化草
◎白色…弱化草
この洞穴内には5種類の薬効のある草が生えているようだ。勢力図…というか各種草の多さでいえば、以下のような感じだ
雑草>>>薬草>>毒草>魔力草≧強化草≒弱化草
まぁ…雑草にも色々と種類はあるが、薬効の無い雑草が最も多く、だいぶ減って薬草、そして少し減って毒草、魔力草、そして魔力草より似たような数だが強化草と弱化草が。強化草と弱化草は似たような数だけど…
(ここで採取できても1つか2つか…)
取り敢えずサンプルってことで1つづつ採取…つまりは今取った以外には取らない方がいいだろう。魔力草も同様だ…これだけ数が少ないということは、この洞穴じゃ殆ど取れないのだろうしな…
(じゃ、薬草を…取り敢えず8割くらい)
ごぞっ…と薬草が消える。
(次に、使うかも知れないし…)
と、毒草をごそっと収納。
(最後に、また何か作るかも知れないし…)
と、雑草を…どうせすぐ生えてくるだろうしと、全てをごぞっと。
「ふぅ…こんなもんか」
かなりすっきりした群生地を見て、ヒロが振り返ると…
「終わった…のか?」
とアインが立っていた。
「見た?」
ぶんぶんぶん!!
と否定の顔振りをするので許すことにした(偉そうなw)
「じゃあ、出発かな?」
「あ、あぁ…」
という訳で、水筒を受け取って出発することに…あぁ、冷水は補充しといたよ。
・
・
「どした?…アイン、顔色が悪いが?」
トルンが偶々後ろを見た時にアインの顔を見て問うが…
「い、いや何でもない!…光源が上にあるから影でそう見えるだけだろ?」
と慌ててそう答えた。
「そうか?…辛いならすぐいえよ?」
「あ、ありがとう…」
というやり取りが後ろから聞こえてきたり…アハハハハ。
・
・
さて、洞穴の全てを見るのはしんどいし(主に俺が)、
(大体は奥行きが無い途切れた道で助かったな…)
唯、先住者のトイレだかゴミ捨て場らしく…ものごっす臭くて目が痛くて鼻が曲がりそうな…いや、分岐路から漂ってくる臭いでな…
「嫌な予感がするから無視しませんか?」
といったんだけど1度だけ進んで酷い目に…鼻もな…遭ったわ(苦笑)
分岐路に戻って独りで
「「「俺らにも使ってくれ!」」」
って涙交じりに怒られた…いや、何で?(普通、そこはお願いする所でしょ!)
・
・
…とまぁ、変な臭いがする道はスルーして進むこと数10分…
「徐々に明るくなって来たな…この頭の上の消してくれんか?」
「アイサー」
ってことで、狙い撃ちになるからと
「…あ~確かに奥が明るいか」
ぼそぼそと喋ってると、口に人差し指を添えて睨まれる。
(あーはいはい、黙れね…)
コクコクと頷きつつ、口を抑える。しょうがないから手拭いを取り出して鼻から下を覆っておく。
そろそろと進み、奥の明かりがだいぶ強くなって来た所を見る。
(ありゃあ…ゴブリンだけじゃないな…)
確かに緑色の小鬼が沢山居るが、その奥には…
「シャーマンとキング…ヤバいな(ぽそぽそ)」
「…後方からのバックアタックはありませんが(ぽそぽそ)」
「なら、ヒロは後ろに下がらせろ(ぽそぽそ)」
「あの…(ぽそ)」
「何だ?(ぽそ)」
「
「「「できるのか?(ぽそぽそ)」」」
「えぇ、まぁ…皆さん1箇所に集まって貰えば消費魔力も抑えられますし(ぽそぽそ)」
…という訳で、防御はいいから敏捷と攻撃に特化した強化を注文された。
普通は平均的に上昇バフを掛けられるだけらしいが、生活魔法のそれは上昇幅が低いだけでどのステを上昇させるかある程度自由が効くのだ。細かいことは省くが、補助魔法使いの場合は属性に依って上昇ステが決まってるそうだ…細かいよな…
「じゃ、いきます(ぽそり)」
「「「おお、宜しく(ぽそぽそ)」」」
(敏捷ってことは恐らく武器を振る速度を上げたり移動速度を上げたりだよな?…そして攻撃力といえば筋力強化と…可能なら動体視力も上げとくか…)
細かいことをいえば2点じゃなくてもっと多そうだが…取り敢えず怪我したらと思い、敏捷・筋力に加えて目の強化も行っておく。いつもよりちょっと良くなった程度なので、それ程違和感は無いと思う…
「
1箇所に固まってるブロンゴを始めとした4人の冒険者たちに3色の光が宿り、消える。
「これで大丈夫です。一応…20分くらいは持続すると思いますが気を付けて下さい(ぽそり)」
そして、離れた4人は男臭さを漂わせ…グッドサインを示してから離れて行く。
(さてと…バックアタックがどうこういってたし…)
ゆっくりと道を進み…中を覗き込んでから
(うぷ…中に入らない方が良さそうだな…)
と、肉が飛び散り、血飛沫が踊る中の様子を見てから少し引っ込む。
(この辺でいっか…
ずごご…と、入り口側を塞いでおく。これで挟撃は回避できるだろう。
そして、中の空間側にも簡単な扉付きの土壁をこさえておく。
(
ずごご…
扉とはいえ、ドアノブのある立派なドアではなく、単なる引き戸だ。外と中に窪みがあるが背の低いゴブリンたちなら手が届かないので開けられることは無いだろう(大体1.2m辺りに付けておいた)
(下から見たら窪みがあるようには見えないからな…さて、戦況はどうかな?)
土壁に開けてある目穴を覗き込む。大型の盾や兜なんかに付いてる横に広い覗き穴だ。一応、外側には半透明の硬い板を付けてるので此処から覗いてる…とは思われないと思うが…
「…ふむ。膠着はしてないし、そこそこ優勢?」
時々、4人の背後から足を忍ばせて近付くゴブリンが居るのに気付いたので、小さい(ゴブリンの膝くらいの高さ)土壁を作って転ばせて妨害したりしていた。
「うーん…お?」
どがん!どがん!どがん!
背後の土壁から打ち付ける音がする。
(ははぁ…やっぱりシャーマンから指示を受けてる別動隊が居たようだな…)
但し、獲物はこん棒か、せいぜい錆びた短剣なのだろう…築いた土壁を破壊できる程じゃなかったようだ。
(もうちょい強化しといた方がいいか?)
という訳で、
再び戦場となっている広場に目を戻すと…
「…っ!?」
奥に居たゴブリンシャーマンが杖を掲げ、今まさに炎の魔法を発動させようとしている所であった。
だが…4人はゴブリンたちと戦っていてそれに気付いてない…
「ヤバイっ!!」
俺は…ドアを引き開け…叫ぶ!
「みんな!魔法の攻撃が来るぞっ!!」
…と。
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土壁で防げと?…いや、4人ともバラけてて何処に壁を作れと…
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