ぼくは舞踏派
夏生薫
ぼくは舞踏派
寒天にぶら下がっているいちょう 休職診断書を投函す
ちぎるごとちいさくなっていくレタス まだはたらける(まだはたらける)
身体とふとんを使い夜を泳ぐ競技の技術点は3点
起き上がり方しか知らぬおきあがりこぼしの中は空洞らしい
自己啓発本棚に手を伸ばすとき繋いだつまの指先を解く
五月雨を集めてとける山荷葉泣きたいんなら泣いたらええやん
明日がくる前にまぶたに降りる闇 夜のまぐろは寒くないんか
眠剤を胸ポケットにしのばせる銃弾からのお守りとして
皆の者受け取るがよい六月も休職したる詫びが羊羹
六月の真白のページ破かんとすればすべてが解けゆく手帳
同名の田中はどこへ行ったんや主なしとて黙るな多肉
昼飯にキンパ一本求めればおまけのエナジードリンク甘し
きみのこと安売りしたらあかんよと励ますぼくは時給千円
養生中立入禁止を越えたぞ生えてみせろよ芝生 (知らんし)
カップ焼きそば作るとき捨てられる熱い湯みたいに会社やめたい
スマートフォンと十万円札の厚さを比較している給料日の夜
改札を前行くヤツのTシャツが「武闘戦線」 ぼくは舞踏派
白い窓から吹き込んだ突風がすべてのやまいだれを揺さぶる
海水の辛さで腹をふくらませえいえんに遠泳をつづける
眼底を刺す熱の正体求め息継ぎの指先を尖らす
ぼくは舞踏派 夏生薫 @kaorunatsuo
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